作ってもらった道具は、誰が面倒を見るのか——導入後のメンテナンスと、担当者が退職する日
道具を作ってもらったあと、メンテナンスを誰がやるかを決めていなければ、誰もやりません。そして、誰もやっていないことにしばらく気づきません。壊れれば誰かがすぐ言ってきますが、担当が代わったときの方は、気づかれないまま静かに進んでいくものです。
私たちは建設会社です。自分たちで使うAIの道具を2026年1月から作り、いまも自分たちで直しています。作る側から見ていると、渡したあとに何が起きるかは、作っている最中よりよく見えました。最初から使われなかった道具の話も、このブログに書いています。
以下は、作り手として見てきたことです。受け取る側の実感とは違うところもあると思います。
道具を導入したあと、メンテナンスは誰がやるのですか?
決めていなければ、誰もやりません。
道具そのものは動き続けるでしょう。サーバーが止まったわけでも、画面が壊れたわけでもない。ただ、会社の側が変わっていきます。工種が増える。提出先の書式が変わる。人が入れ替わる。そのたびに、道具は少しずつ会社からずれていきます。
この「ずれ」を直す人を決めていないと、ずれたまま使われ、やがて開かれなくなります。経験したのは、壊れて止まる形ではなく、合わなくなって離れていく形の方でした。
様式そのものの話は日報アプリの様式へ譲ります。ここから先は、直す人が社内からいなくなったときの話です。
受け取った日が、いちばん動く日です
納品の日は、たいてい全部が動きます。データも入っていて、説明も聞いたばかりで、みんなが画面を開く。
問題は、その日が頂点になることでした。道具を見ていて分かったのは、導入直後は物珍しさで増えるので、本当のところが出るのは2か月目以降だということです。うまくいくかどうかは、入れた日ではなく3か月目あたりだと感じています。
だから、受け取った日に決めておくことがいくつかあります。それは後の節にまとめました。先に、下がっていく途中で何が起きるかを順に見ていきましょう。
担当者が退職したら、引き継ぎはどうなりますか?
操作の手順は引き継がれます。ただ、なぜその形にしたのかは引き継がれません。
道具を入れるときには、たいてい旗を振った人がいます。その人が異動したり、退職したりする。引き継ぎ書は作られることが多いのですが、そこに書いてあるのは押す順番です。「この列はなぜここにあるのか」「なぜこの承認を挟んでいるのか」。理由が消えると、次の人は触るのを怖がります。触れないものは、直しようがない。
退職が決まってからでも、間に合うことはあります。引き継ぎ期間のうちに、後任と一緒に画面を開く時間を一度だけ取る。そのとき前任者に、いちばん触るところを実際に動かしてもらいながら、なぜその形にしたのかを口で言ってもらう。言えたことをそのまま1枚に書き取れば、それが引き継ぎ書の代わりになります。紙を書いてもらうより、動かしながら話してもらう方が早いというのが、社内でやってみた実感です。
私たちも、人の頭の中にしかない情報が消える問題には別のところで当たりました。図面は会社の記憶に書いたのは、ベテランの索引をどう残すかという話です。道具についても形は同じで、残すべきは手順ではなく、決めた理由の方でした。

「誰も直せない」より先に、「誰も気づかない」が来ます
作ってもらった後の心配というと、「社内に直せる人がいない」を思い浮かべがちです。ただ、自分たちの道具で先に来たのは別のことでした。
誰も、ずれていることに気づいていない。 こちらが先に来ます。
使われなくなるときは、誰も文句を言いません。画面は動いていて、聞けば「使ってます」と返ってくる。嘘ではなく、月に1回は開いているからです。それでも、実態としては止まっています。
だから、受け取るときに要るのは「直せる人」より先に「気づける形」でした。異常が出たときに、誰かに届くようになっているか。この考え方はその通知、一人にしか届いていませんかに書いています。気づくのが早ければ、直す人が一人でも間に合います。
受け取るときに、決めておくこと
引き継ぎの準備は、引き継ぐ日にはできません。受け取る日に決めます。
社内で触る範囲を決める。 中身の作りまで触れる必要はありません。名前の付け替えや並び順くらいが社内で動かせると、小さなずれは自分たちで片づきます。
なぜその形にしたのかを、1枚残す。 手順書とは別に必要です。どの列がなぜあるのか、どの承認をなぜ挟んだのか。次の担当が触れるかどうかは、これがあるかどうかで決まります。
異常の宛先を、二人以上にする。 一人だけにしておくと、その人が抜けた日から気づくのが遅れやすくなります。
直しを頼む先を、名前で書いておく。 「作った会社」ではなく、その中の誰か。当社が引き受ける形はやりますにまとめてあります。
データを持ち出せるかを確認する。 使い続ける前提でも、確認だけはしておきます。持ち出せると分かっていれば、後の判断が自由になります。
よくいただくご質問
Q. 社内にIT担当がいません。それでも受け取れますか。
受け取れます。この記事で挙げた決めごとは、どれも技術の話ではないからです。誰が何を決めるかの整理は、社内にIT担当がいないときに分けて書きました。
Q. 引き継ぎ書があれば大丈夫ですか。
手順だけの引き継ぎ書だと、次の人は操作はできても変更ができません。「なぜこの形なのか」が1枚あると、触っていい範囲が分かります。分量は多くなくても足ります。
Q. 作った会社に、ずっと払い続けることになりませんか。
その心配は自然だと思います。見るところは、金額そのものより、やめたいときにやめられるかです。契約期間の縛り、データをどの形で返してもらえるか、返ってきたデータで他社に頼み直せるか。頼み方そのものの違いはこちらに書きました。契約書の書き方は会社ごとに違うので、判断に迷う条項は契約前に弁護士などの専門家にもご確認ください。
Q. 使われなくなってしまった道具は、もう戻せませんか。
戻ることはあります。ただ、機能を足して戻ることは少なく、たいていは入力を軽くする方で戻る。使われなくなった理由が「入力する側に得がなかった」なら、そこを直さないと同じことが起きます。
まず、いま動いている道具の連絡先を書き出してください
道具の名前と、動かなくなった日に最初に知らせる相手。それだけを1枚に書いてみてください。
名前が埋まらない道具があれば、そこが危ないところの一つです。人が辞める前でも、様式が変わる前でも、いま書けます。
検収の場で何を見るかは検収で何を見るかに、作り込みの中身は作りますにまとめてあります。
建設会社のAI導入の全体像はまとめ:建設会社のAI導入、何から始めて何でつまずくかに読む順番で並べています。
これから作ってもらう方も、すでに入れた道具が使われなくなっている方も、無料60分相談会(前半30分=当社の実例と実画面の説明・後半30分=貴社の話を伺う質疑・オンライン・建設会社限定)でいまの状態から一緒に見ています。私たちがどんな仕事をしているかはこちらにまとめています。
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ケンセツベース(ARCFEELGROUP株式会社)
土木・建築・設備の建設グループ(110名・3業種)が、自社でのAIツール8本の内製を主導しました。 評論ではなく、当事者としての実装記録を書いています。
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