「使えていますか」と聞かないことにしました——AIが使われなくなる兆候は、静かに出ます
導入から数か月経った頃、「使えていますか」と聞くと、たいてい「はい、まあ」と返ってきます。
この「まあ」が、かなり危ない返事なんですよね。
土木・建築・設備の3業種で、約110名。自社でAIツールを8本動かしてきました。今日は作る話ではなく、入れたあとの話です。道具が使われなくなるのは、事件としてではなく、静かに起きます。
誰も文句を言わないまま、止まります
壊れれば、すぐ言ってきます。「保存できません」「数字が違います」。これは分かりやすい。
でも、使われなくなるときは違います。
- 誰も文句を言いません
- 止まってもいません
- 画面を開けば、ちゃんと動いています
ただ、開かれていない。それだけです。
しかも、聞くと「使ってます」と返ってきます。嘘をついているわけではありません。月に1回は開いているからです。本人の感覚では「使っている」で合っています。
**自己申告は、悪気なく実態とずれます。**ここが厄介なところでした。
だから、数字の側で見ることにしました
そこで、社内の8本について、いくつかの兆候を機械側で拾うようにしました。うちでは「停滞シグナル」と呼んでいます。
見ているのは、難しいことではありません。
一つ目、開かれた回数が前の月より落ちていないか。
増えなくても構いません。落ち始めていないかを見ます。導入直後は物珍しさで増えるので、2か月目以降の下がり方が本当のところを表します。
二つ目、特定の人だけが使っていないか。
一人だけが使っている状態は、その人が休んだ日に止まります。「導入した」ではなく「一人が個人的に使っている」に近い。これは危ない状態です。
三つ目、入力はあるが、その先に進んでいないか。
日報が入っているのに集計されていない、経費が読み込まれているのに承認されていない。途中で止まっているのは、その先の使い方が伝わっていないか、誰かの手間が重すぎるサインです。
兆候が出たら、機能を足さない
ここは自分たちへの戒めでもあります。
使われていないと分かると、つい「機能が足りないのかもしれない」と考えます。そして何かを追加する。でも、たいていの場合、原因はそこではありませんでした。
- 入り方が分からなくなった(パスワードを忘れて、そのまま)
- 一度失敗して、それきりになっている
- 前のやり方の方が早い場面がある
- そもそも、その人の仕事では出番がない
どれも、機能を足しても解決しません。聞きに行くしかない種類の話です。
うちは、締め出しで一人静かに離脱するという失敗を実際にやりました(二段階認証を入れたら社員が締め出された話)。あのときも、機能ではなく入口の問題でした。
大掛かりな仕組みは要りません
うちは自分たちで作っているので機械側に組み込みましたが、市販のツールを使っている会社なら、そこまでのものは要りません。
**月に1回、誰が何回開いたかを眺める。**これだけで十分です。多くのアプリには利用状況が出ますし、無ければ入力件数を人ごとに数えるだけでも傾向は見えます。エクセルに月ごとの件数を並べておけば、下がり始めた月が分かります。
大事なのは、精度ではなく見る習慣があることです。
そして、下がっている人がいたら、その人に直接聞く。「使ってますか」ではなく、**「先月あまり開いていないようですが、何か使いにくいところがありましたか」**と聞きます。数字を持って聞くと、答えが具体的になります。

「使えていますか」と聞かない
冒頭の話に戻ります。
「使えていますか」は、ほとんどの場合「はい」としか答えられない質問です。忙しい相手に、わざわざ「使っていません」と言わせるのは酷ですし、そう言われても次の話がありません。
だから、先に数字を見てから、具体的な場面を聞く。この順番にしてから、返ってくる答えが変わりました。「実は月末だけ間に合わなくて」「あの画面から先が分からなくて」といった話が出てきます。
導入がうまくいくかどうかは、入れた日ではなく、3か月目に決まるという感覚があります。そこで静かに離れられてしまうと、もう戻ってきません。
よくある質問
Q. 利用状況を見るのは、監視のようで気が引けます。
A. 見ているのは人ではなく道具です。「誰がサボっているか」ではなく「どこで詰まっているか」を探すため——そう社内に伝えておくと受け取られ方が変わります。実際、詰まっているのはたいてい道具の側でした。
Q. 使われていないなら、やめてもいいのでは。
A. やめる判断はあってよいのですが、理由を確かめてからにしてください。入口で詰まっていただけなら、直せば使われます。出番のない業務だったなら、潔くやめる。理由を見ずにやめると、次に何を入れても同じことが起きます。
Q. 何か月くらい様子を見ればよいですか。
A. 最初の3か月は毎月、その後は四半期ごとで足ります。最初の3か月が一番動くので、そこだけ細かく見ておけば後は軽くなります。
静かに離れられる前に
道具を入れる話は、入れるところまでが注目されます。でも、実際に効くかどうかは、その後の数か月で決まります。
そして、うまくいっていないとき、誰も教えてくれません。
だから、聞くのではなく見る。見てから聞く。この順番だけ決めておけば、たいていのことは間に合います。うちが8本を回してきて、一番効いた習慣がこれでした。
このテーマの記事はまとめ:社員とAI、ChatGPTの使い方、AIの担当者に読む順番で並べています。
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AUTHOR
﨑元 理安(ARCFEELGROUP株式会社 代表取締役)
土木・建築・設備の建設グループ(110名・3業種)の社長として、自社でのAIツール8本の内製を主導。 評論ではなく、当事者としての実装記録を書いています。
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