【AI活用事例】建設業の経費精算——領収書414件が、束のまま送るだけの仕組みになるまで
(導入事例 第2回)
結論の数字から先に言います。運用開始から2026年9月4日までで、処理した領収書は414件(うち8月6日から9月4日までの30日間で117件)。取り込みの回数は148回なので、1回あたり平均およそ2.8枚を束のまま入れている計算になります。すべて本番データベースの実測です。
導入事例の第2回です。個別の会社さまの数字はお約束どおり出せないので、今回も私たち自身のグループを題材にします。第1回の日報・勤怠の事例に続いて、今回は経費精算です。
事例の属性
自分たちのグループが題材なので、数字は全部そのまま出せます。
- 業種: 土木・建築・設備の3業種(建設グループ)
- 規模: グループ社員 約110名
- 導入したもの: 経費精算AI(自社内製)
- 導入時期: 2026年1月に着手
導入前: 集めて、読んで、打ち直していました
導入前は、よくある形でした。ひと言でいうと「紙で集めて、手で打ち直す」です。現場から上がってきた領収書を月末に集め、日付と金額と支払先を目で読んで、表計算に打ち直す。読めない字は本人に聞き、どの現場の分か分からないものは差し戻す。
このときの困りごとを詳しく書いた記事が別にあるので、そちらに譲ります(経費精算、スタッフは「スキャンするだけ」にした話)。この事例で書きたいのは、その後どうなったかの数字の方です。
変えるときに決めたのは、入口で人に選ばせないことでした。出す側は、まとめてスキャンして送るだけ。1枚ずつ向きを揃えたり、1件ずつ登録したりはさせない。ここを守ったので、束のまま入ってくるようになりました。

実測: 148回の取り込みで、414件が記録になりました
1つのファイルに平均2.8件——つまり、束で入ってきています。
2026年9月4日時点の実測です(自社データベースの直接集計)。
| 指標 | 実測値 |
|---|---|
| 処理した領収書 | 414件 |
| 30日間(8/6〜9/4)の処理 | 117件 |
| 取り込みの回数 | 148回 |
この「取り込み148回で414件」という比が、いちばん言いたいところです。1ファイルあたり平均2.8件。束で入ってくるのが主で、1枚ずつ送る形にはなっていません。
中でやっていることは、順番でいうとこうです。まずAIが束のファイルをそのまま読んで、「これは何件ぶんか」を判断して1件ずつに分けます。そのあとで機械がページを切り出して、各件の控えとして貼り直します。先に件数へ割るのはAIで、機械は後から控えを揃える側です。
人の側から見ると、この順番はどうでもいい話に見えます。ただ、作るときには効きました。「まず人が1枚ずつに分ける」形にしなかったので、出す側の手数が「スキャンして送る」だけで止まっています。
この30日間の117件というのは、1日あたり4件ほどの計算です。第1回の勤怠が1日60件規模だったのに比べると、枚数はぐっと少なくなります。ただ、1枚あたりに人が触る回数は経費の方が多いんですよね。勤怠は「出勤」と送れば終わりですが、領収書は日付も金額も支払先も一つひとつ違います。枚数が少なくても効いたのは、たぶんそのぶん1枚が重かったからだと思っています。
実際の画面はこんな形です。

正直な話: 手間は入口ではなく、出口に残りました
山場だと思っていた読み取りは早く落ち着いて、仕事が残ったのは会計ソフトへ渡すところでした。
数字だけ見るときれいですが、うまくいかなかったところも書いておきます。
作る前は「読み取りの精度」が山場だと思っていました。実際にやってみると、そこは思ったより早く落ち着いて、残った手間は出口の方でした。会計ソフトへ渡す形に合わせるところです。
うちは弥生会計を使っているので、仕訳日記帳のCSVに合わせて出しています。この形式は列の並びが決まっていて、こちらの都合で増やしたり減らしたりできません。読み取った内容を、その決まった形にきちんと流し込むところに手間がかかりました。
AIに読ませる部分より、その後ろの「渡す形」の方が仕事だったというのは、正直なところ予想外でした。道具を選ぶときに「AIの精度はどうですか」と聞かれることが多いのですが、うちの実感では、聞くべきはむしろ「うちの会計ソフトの形で出せますか」の方です。
もうひとつ。1枚の紙に領収書が2枚貼ってあるような出し方をされると、AIが2枚目を読み落とすことがあります。仕組みとしては2件に分けられる作りなのですが、読み取りの側で取りこぼすので、人が気づいて足しています。仕組みで全部を吸い切れているわけではありません。
そして、どの現場の分かは領収書に書いてありません。読み取りの話とはまったく別の設計が要るところで、領収書に、工事コードは書いていませんがその一本です。
もう一点、AI側が混み合って応答が返らない日もあります。うちは自動で何度か試し直しています。それでも駄目な日は、人が後から流し直す。それでいい、と決めました。落ちない仕組みを目指すと、たぶん一生かかります。
費用対効果はどう見ているか
月末の経費まわりの作業は、自社の試算で3時間から30分ほどになる計算です。説明会でお見せしている試算の数字で、実測ではありません。そこは分けて見ていただけたらと思います。
うちが実際に効いたと感じているのは、時間の長さより月末に机の上へ山ができなくなったことの方です。日々入ってくる形にすると、締めの日にまとめて発生する重さが消えます。ここは月末の締めが遅いのはなぜ?で書いた「締める前の待ち時間」の話とつながっています。
このページの実測値は全て本番データベースからです(3時間→30分だけが自社試算で、そこは上に書いたとおり区別しています)。増えたぶんは実測データのページで毎月更新しています。

この事例から言えること
出す側の手数を、増やさないところまで削る——第1回の日報・勤怠と、結論は同じでした。日報は「LINEに出勤と送るだけ」、経費は「束のままスキャンして送るだけ」。どちらも、現場や事務の側に新しい操作を覚えてもらわない形にしたので続いています。
もうひとつ、経費ならではの学びは出口を先に確かめることです。会計ソフトへどの形で渡すかは、後から変えると作り直しになります。着手の前に、いま使っている会計ソフトの取り込み形式を1回見ておくと、遠回りが減ると思います。
よくいただくご質問
説明会でこの事例をお見せすると、だいたいこの三つを聞かれます。
Q. 会計ソフトが弥生でなくても、同じことはできますか?
できます。会計ソフトはどれも取り込む形が決まっているので、確認することは同じです。うちがたまたま弥生会計なだけで、他のソフトでも「この形で出せますか」を先に聞いておけば、後の作り直しが減ります。
Q. スキャナーが無い会社でも始められますか?
始められます。うちにもスマートフォンから入ってくる分があります。まとめて出せるぶんスキャナーの方が枚数は多いのですが、道具より、出す人がその場で送れるかどうかが定着を決めます。なお、読み取った内容は画面に並んで人が直してから確定します。金額に直結するところを機械任せにしない考え方はAIで作った書類の責任は誰にある?にあります。
Q. 経費と勤怠、どちらから手を付けるといいですか?
うちは勤怠が先でした(第1回がその話です)。枚数が多くて毎日発生するぶん、効果が数字で早く見えるからです。ただ、月末の重さが先に来ている会社なら、経費からでも構いません。順番より、いま領収書や出面がどう集まっているかを先に洗う方が大事です。封筒で持ってくるのか、写真で送ってくるのか。今の流れに乗らない道具は、作っても使われません。
増えていく数字は実測データのページに出しています。同じ規模感で「うちならどうなるか」を見てみたい方は、30分説明会(Zoom・顔出し不要・無料・建設業を営む会社さま限定)で実際の画面をご覧いただけます。
このテーマの記事はまとめ:建設業の経費精算・資金繰り・経営の数字に読む順番で並べています。
AUTHOR
﨑元 理安(ARCFEELGROUP株式会社 代表取締役)
土木・建築・設備の建設グループ(110名・3業種)の社長として、自社でのAIツール8本の内製を主導。 評論ではなく、当事者としての実装記録を書いています。
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