領収書に、工事コードは書いてありません——AIが読めても、行き先は決まらない
領収書に、工事コードは書いてありません。
当たり前です。ガソリンスタンドのレシートに、うちの現場の番号が入っているわけがありません。
社内で経費精算の仕組みを作ったとき、いちばん手をかけたのはここでした。読み取ることではなく、読み取ったものがどの現場のものかを決めるところです。
AIが読めても、どの現場のものかは決まりません
社内でAIに何かを読ませようとすると、書類が二種類に分かれます。
工事コードが書いてあるもの。 発注書、注文請書、出来高の書類、現場から上がってくる原価の伝票。ここには最初からコードが入っています。だから読み取れば、そのまま原価に載ります。
工事コードが書いていないもの。 領収書、現場からの報告、メール、手書きのメモ。読み取ること自体はできます。ただ、読み取った後に「これはどの現場か」が決まりません。
AIが弱いのは、読む方ではなかったんですよね。読んだものを、どこに付けるかの方でした。
決まらないと、人が教えることになります
コードが書いていないものをそのまま取り込むと、最後は誰かが「これはあの現場の分」と教えることになります。
出した本人は覚えています。ただ、月末に見る人は覚えていません。
一件あたりは数十秒です。でも、この数十秒は減りません。AIを入れても、そのまま残ります。
かといって、書いてもらう形にすると止まります
ここで最初に思いつくのは、「じゃあ書いてもらおう」です。
領収書の裏に工事コードを書いてもらう。報告のときに工事コードを付けてもらう。写真の名前に工事コードを入れてもらう。
これは、まず続きません。
工事コードは事務所側の都合で決めた番号で、現場の人が毎回思い出すものではないからです。最初の何日かはやってくれますが、忙しくなればそこから抜けます。抜けた分は事務所で埋めることになるので、結局元に戻ります。
現場が悪いのではなくて、頼み方が合っていないだけだと思います。
だから、打たずに選ぶ形にしました
うちの経費精算では、工事コードを打ってもらう場面をなくしました。
領収書をスキャンすると、AIが金額・日付・品目を読み取ります。そのうえで、現場は一覧から選ぶだけです。番号を覚える必要はありませんし、書き写すところもありません。
スタッフはスキャンして選ぶだけ、経理は確認するだけに近づきました。経費精算そのものの話は別の記事に書いています。
つまり、うちがやってきたのはコードを書く人を増やさずに、コードを付けることでした。AIが賢くなった話より、こちらの方が実務では大きかったです。
着手する順番も、たぶんここで決まります
AIを何から入れるかという話になったとき、業務の大きさや面倒さで選びがちです。
ただ、実際に進みやすいのはコードが入っている書類の方です。読み取れば、そのまま行き先が決まるからです。
コードが書いていないものから始めると、うまく読み取れても最後に紐づけの作業が残ります。「AIを入れたのに、手間が減った気がしない」と感じるときは、たいていここが残っています。
今日できる確認
一つ目は、社内でAIに読ませたいと思っているものを三つ挙げて、それぞれに工事コードが書いてあるかを見ることです。書いてあるものが、そのまま着手の候補になります。
二つ目は、書いていないものについて、誰かに書いてもらう案になっていないかを見ることです。なっていたら、その案はたぶん続きません。
三つ目は、書かずに決められないかを考えることです。一覧から選ぶだけにする。前回と同じなら引き継ぐ。読み取った側で候補を出す。このどれかに寄せられれば、現場の手間は増えません。
よくいただく質問

Q. 現場の写真はどうするのがいいですか。
A. 正直に言うと、写真は難しいところです。撮るときにコードを付ける運用は、まず定着しません。撮った日や場所から推測させることもできますが、近い現場が同時に動いていると間違いますし、間違いに気づけません。写真は当面、人が見て仕分けるものとして残る前提で考えた方が現実的だと思っています。ここを無理にAIに寄せると、確認の仕事が増えます。
Q. 一覧から選んでもらうのも、手間ではありませんか。
A. 打つのと選ぶのは、別物のようです。うちの経費精算も現場は選ぶだけにしていますが、ここは止まっていません。番号を覚える必要がなく、選ぶのは一回で終わるからだと思います。前回と同じ現場なら引き継がれる形にすれば、選ぶ回数自体も減ります。
Q. コードが入っていない過去の書類は、付け直すべきですか。
A. 全部やるのは重すぎると思います。よく見返すものだけで十分ではないでしょうか。それより、今日から入ってくる分の形を決める方が効きます。過去の分は、必要になった時に探せば済みます。
読む力より、行き先
AIの話をするとき、どれくらい正確に読めるかが気になります。もちろん大事です。
ただ、社内で8本ほど作ってきて効いたのは、読む力の方ではありませんでした。読んだものの行き先が決まっているかどうかでした。
行き先が決まっていれば、多少読み間違えても直せます。行き先が決まっていなければ、正確に読めても人が受け止めることになります。
そして、その行き先は現場に書いてもらうものではない。ここが、社内で作ってみていちばん変わったところでした。
このテーマの記事はまとめ:建設業の経費精算・資金繰り・経営の数字に読む順番で並べています。
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﨑元 理安(ARCFEELGROUP株式会社 代表取締役)
土木・建築・設備の建設グループ(110名・3業種)の社長として、自社でのAIツール8本の内製を主導。 評論ではなく、当事者としての実装記録を書いています。
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