経営会議の資料はAIで作れる?——グループ4社の数字を毎月まとめる建設会社が答えます【実務Q&A】
この記事は「実務Q&A」です。調べ物のための記事です。結論を先に書いています。読み物としての記事は、ブログ一覧の「読み物」からどうぞ。
作れます。ただ、私たちがやってみて効いたのは「資料をAIに書かせる」ことではなく、数字が自分で集まってくる場所を先に作ることの方でした。会議の前日に人が集めて回るのをやめる、という順番です。
社内で使う道具を自分たちで作りながら回している建設会社です。そのうちの一つが経営ダッシュボード——各社の決算書や月次を一か所に集めて、会社ごと・部門ごと・得意先ごとに並べ直して見る画面で、いまグループ4社・四つの部門ぶんを毎月まとめています。実際に使っていて聞かれることを、Q&Aの形にしました。
Q. 経営会議の資料は、AIで作れますか?
作れます。ただ、多くの会社で重いのは資料を清書する時間ではなく、**その手前の「数字を集めて回る時間」**の方ではないでしょうか。
うちもそうでした。各社の月次、部門ごとの動き、得意先ごとの増減。会議の一週間前から、それぞれの担当者に「あの数字ください」と声をかけて回る。返事が揃った頃には、もう前日になっています。
ですので、順番を逆にしました。会議のために集めるのをやめて、置かれた時点で自動的に入る場所を先に作る。資料はそこから出す。AIが効いたのは清書ではなく、この取り込みと読み替えの部分でした。
Q. 毎月、誰かが数字を入力し直すことになりますか?
なっていません。ここが続くかどうかの分かれ目だと思っています。
渡しているのは、いつも通り出てくるPDFだけです。Dropboxの決まったフォルダに置くと、AIが中身を読んで表に起こします。いま入っている財務諸表は24件で、24件とも取り込みの記録がDropboxからになっています(自社データベースの実測)。手で打ち直した記録は残っていません。明細は146行です。
新しい入力の手間が一つでも増えると、そこから崩れます。増えた手間は、たいてい一番忙しい人のところに乗るからです。単発でPDFを読ませる使い方の方は決算書・試算表はAIに読ませられる?にまとめました。今回はそれを毎月自動で回す側の話です。

Q. 部門ごとの数字は出せますか?
出しています。四つの部門について、月ごとの数字を96件(自社データベースの実測)持たせて、推移で見られるようにしました。
会議で一番聞かれるのが「どこが効いていて、どこが沈んでいるか」なので、合計だけでは足りないんですよね。全体は悪くないのに、開けてみると一つの部門が引っ張っていただけ、ということが起こります。
ここで効いたのは、部門の分け方を会社が実際に使っている呼び方に合わせたことでした。整った分類を作っても、日常でその言葉を使っていなければ、会議で誰も自分の話として聞きません。
Q. 得意先ごとの数字も見られますか?
見られます。得意先を50社あまり登録して、月ごとに並べています。
これは思っていたのと違う効き方をしました。多い順に眺める使い方より、数字が入っていない行が目に付く方が実務では効いたんです。今月まだ入っていない得意先が何社かある。取引が止まったのか、記録が遅れているだけなのか。「分からない」が形になって見える、というんでしょうか。合計を眺めているときには起きなかったことでした。
Q. 会社がいくつもあると、まとめるのは大変ですか?
大変になるのは、まとめる作業そのものより呼び名を揃えるところでした。
グループ4社ぶんを同じ画面で見ていますが、同じ中身でも会社によって科目や部門の呼び方が少しずつ違います。そのまま足すと、数字は出るのに意味が合わない気がしています。そこで、寄せ先になる標準の科目を先に決めておく形にしました。会社ごとに「この行は標準のこれ」という対応表を人が書いているわけではありません。標準の一覧をAIに渡して、意味で寄せてもらっています。
裏を返すと、会社が1社しかないなら、この手間はほとんどいりません。複数社を抱えている会社ほど、先に揃えておく値打ちが大きい、という感覚です。
Q. 中期の計画や、心配ごとも同じ場所に置けますか?
置いています。中期の計画を24件、気にしているリスクを9件(自社データベースの実測)登録して、月次と同じ画面から見られるようにしました。
理由は単純で、別のファイルに置くと会議で開かれないからです。中期計画は年に一度作って、そのあと誰も見ない。よくある話ではないでしょうか。今月の数字の隣にあれば、「この数字は計画のどこへ向かっているのか」を毎月見ることになります。
心配ごとの方も同じでした。一覧にして寝かせておくと忘れます。数字の横に置いておくと、月次を見るついでに目に入ります。
Q. 読み取りを間違えていたら、誰が気づくのですか?
人です。ここは変えていません。
読み違いは起こる前提で、出てきたものを見る側が答え合わせをする形にしています。この考え方はAIの答えは、誰が答え合わせをするのかに書いたとおりで、経営側の仕事が、作る作業から受け取って確かめる仕事に移った、という感覚に近いです。
逆に言うと、確かめる人を決めないまま入れるとうまくいきません。誰が見るか決まっていない資料は、違っていても違ったまま流れていきます。
Q. 道具を選ぶ前に、やっておくことはありますか?
あります。というより、そこがほとんどでした。いきなり画面を作らなくて大丈夫です。
- いま会議に出している資料を、一枚ずつ数える——何枚あって、誰が作っているか
- そのうち「毎回同じ形で作っているもの」に印を付ける——形が決まっているものだけが仕組みにできます
- 印の付いたものの元データが、どこにあるかを書き出す——ここで「あの人のパソコンの中」が出てきたら、そこが先に手を付ける場所です
3番まで来ると、道具を選ぶ前に分かることがけっこうあります。元の置き場所が決まっていないものは、AIを入れても自動にはならないんですよね。画面よりデータが先、という以前書いた話と同じところに行き着きました。締めそのものを早くする側の話は月末の締めが遅いのはなぜ?の方に書いています。
会議の前日を、どう過ごすか
経営会議の資料づくりをAIに任せる、という言い方をすると、清書を代わりにやってもらう話に聞こえます。やってみて変わったのは、そこではありませんでした。
変わったのは、前日に何をしているかです。以前は数字を集めていました。いまは、集まったものを見て何を話すか考えています。同じ前日でも、中身がまるで違う。
作る時間より、見て考える時間の方を増やしたい。そういう順番で見ていくと、どこに手を付ければいいかが浮かんでくるんじゃないでしょうか。
このテーマの記事はまとめ:建設業の経費精算・資金繰り・経営の数字に読む順番で並べています。
まず全体像を知りたい方は建設会社のAI導入 30分説明会へ。自社の会議資料や数字の集め方を個別に相談したい方は無料相談をご利用ください。AI顧問が何をする仕事かはこちらにまとめています。
AUTHOR
﨑元 理安(ARCFEELGROUP株式会社 代表取締役)
土木・建築・設備の建設グループ(110名・3業種)の社長として、自社でのAIツール8本の内製を主導。 評論ではなく、当事者としての実装記録を書いています。
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