入札の等級(A・B・C)はどう決まるか——発注者ごとに違う格付を、4つの公開資料で並べました
この記事は「実務Q&A」です。調べ物のための記事です。結論を先に書いています。読み物としての記事は、ブログ一覧の「読み物」からどうぞ。
入札の等級(A・B・Cなどの格付)は、発注者ごとに別々に決まります。同じ会社でも、県ではB、市ではA、国では最下位、ということが起こります。点数の境目も、等級の数も、点数の出し方まで機関ごとに違うからです。4つの発注者の公開資料を並べて、どこがどう違うのかを見ていきます。
書いているのはケンセツベースの「入札係」の中の人です。入札係を運営している当部署は、工事の入札参加資格を取っていません(取ったのは国の役務・物品と東京都の物品買入れ等です)。ただし同じグループの建設会社は毎年経審を受けています。この記事の数字は、千葉県・船橋市・国(関東地方整備局)・東京都が公開している資料から取りました。当社の話は、自社で作った概算の仕組みの範囲にとどめます。
入札の等級(格付)は、どうやって決まるのですか?
発注者が、自分の基準で点数を区切って決めます。 土台になるのは経審の総合評定値(P)ですが、そこから先の区切り方は発注者ごとです。
等級とは、入札参加資格者名簿に載るときに付く区分のこと。A・B・Cなどの記号で、その会社がどの金額帯の工事に出られるかを表します。「ランク」と呼ばれることもありますが、この記事では公開資料の表記に合わせて「等級」で通します。全国共通の等級はありません。
土台になる点数は「客観点数」と呼ばれます。東京都の公示には「経審の総合評定値(P)を客観点数とする」と書かれていて、Pがそのまま客観点数として使われることが分かります。Pの計算そのものは全国共通ですが、そのPをどう使うかが発注者ごとに違う、というのがこの記事の話です。
同じ会社なのに、県と市で等級が違うのはどうしてですか?
A等級の境目になる点数が、機関ごとにまったく違うからです。同じ業種でそろえて並べてみると、その差がはっきり出ます。ここでは土木一式で見ていきます。
| 発注者 | 土木一式のA等級 | 何の点数か |
|---|---|---|
| 千葉県 | 1,130点以上 | 総合点数 |
| 船橋市 | 850点以上 | 別表第1の格付(客観的事項に基づく) |
| 国(関東地方整備局) | 3,040点以上(一般土木) | 総合点数(内訳は資料に記載なし) |
| 東京都 | 900点以上(表2) | 客観点数(経審のP)から出す客観等級 |
千葉県と船橋市は同じ千葉県内ですが、A等級の境目は1,130点と850点で280点ちがいます。国の3,040点は、そもそも何を足した点数なのかが資料に書かれていないので、県の1,130点と直接くらべても意味がありません。「うちはA」と言えるのは、発注者を決めてからです。
客観点数と主観点数は、足すのですか?
足すところと、足さないところがあります。千葉県と船橋市は内訳を示さず、国も内訳を書いておらず、東京都は足さずに低い方を採ります。4つの資料を読むと、書き方が4通りに分かれていました。
千葉県は、等級区分の表に「総合点数」とだけ書いています。1,130点以上がA等級(土木一式)という区切りですが、⚠その総合点数の内訳は、この資料には書かれていません。
船橋市は、工事の資格審査について「客観的事項(建設業法第27条の23第3項の規定により国土交通大臣が定める審査の項目)に基づき行う」とし、その結果を別表第1に当てはめて格付けする、と書いています。この公告に「主観」という語は出てきません。
国(関東地方整備局)は「総合点数」で区切っていますが、⚠その内訳もこの資料には書かれていません(「客観」「主観」という語自体が出てきません)。書かれているのは等級区分の表と、⚠一般土木・アスファルト舗装・造園は、技術評価点数が0点だと区分に関係なく最下位等級という注記だけです。点数が足りていても、ここで下がります。⚠技術評価点数が何を評価した点数なのかも、この資料には書かれていません。
東京都は足しません。客観点数(経審のP)から客観等級を出し、別に主観等級を出して、「相違した場合はいずれか低い方を当該業種の等級とする」と書いています。片方だけ高くても、低い方に引かれます。
ここで出てくる主観点数とは、客観点数(経審のP)とは別に、発注者が自分の基準で付ける点数のこと。何をどう見て何点にするかは発注者ごとで、⚠今回の4つの資料のうち、その中身が書かれていたのは東京都だけでした。東京都は過去の最高完成工事経歴の金額から主観点数を出し、それを等級算定表に当てはめて主観等級を決める、としています。
等級が決まると、出せる工事はどう変わりますか?
等級ごとに、発注される工事の金額帯が決まります。 千葉県は、等級区分に応じた発注金額を同じ資料で公表しています(令和8年4月1日から施行された改正後の金額です)。
| 業種 | A等級 |
|---|---|
| 土木一式 | 8,000万円以上 |
| 建築一式 | 10,000万円以上 |
| ほ装 | 3,000万円以上 |
国(関東地方整備局)も同じように、等級ごとの予定価格を公表しています。一般土木工事はA等級が8億2,000万円以上、D等級が7,000万円未満。同じA等級でも、県と国では扱う工事の大きさがまるで違います。
金額帯が決まるということは、等級が上がらないと見ても仕方のない公告があるということです。裏を返せば、自社の等級に合う公告だけを見ればよい、ということでもあります。入札係が毎朝の1巡で等級と業種を使って絞っているのは、このためです。

自社の等級は、どうすれば分かりますか?
申請して名簿に載ると、発注者から通知されます。 受ける前に見当を付けたい場合は、当社が作った経審の概算シミュレーターで目安を出せます。等級の目安まで出せるのは、いまのところ千葉県・船橋市・国(関東地方整備局)・東京都の4機関です。
⚠このシミュレーターは、主観点数や技術評価点数を0として計算しています。そのため、出る等級の意味は機関で違います。千葉県と国(関東地方整備局)は点数が上に乗る仕組みなので、出るのは下側の目安です。船橋市は主観点数のない仕組みなので、そのまま当てはまります。東京都は主観等級との低い方を採る仕組みなので、出た客観等級より、実際の等級が下がることもあります。
名簿に載るまでの順番は公共工事の入札参加資格を取るまでの段取りに、土台になるPの計算の中身は経審の点数(総合評定値P)はどう計算するかに書きました。
よくいただくご質問
Q. 等級はいくつありますか?
A. これも発注者によります。千葉県の土木一式はA〜Dの4つ、ほ装はA〜Cの3つです。東京都は表1〜3(道路舗装・土木・建築など)がA〜Eの5つ、表4(電気・給排水衛生・空調など)がA〜Dの4つ。国(関東地方整備局)は一般土木がA〜D、造園はA・Bの2つです。業種によっても数が変わります。
Q. 経審の点数が上がれば、等級も上がりますか?
A. 上がることもありますが、そう決まってはいません。東京都のように主観等級と低い方を採る仕組みでは、Pだけ上げても主観等級が低いままなら等級は動きません。関東地方整備局の一般土木・アスファルト舗装・造園では、技術評価点数が0点だと区分に関係なく最下位になります。どの機関を狙うかで、効く手が変わります。
Q. 等級が低いうちは、入札に出ても意味がないですか?
A. そうとは限りません。等級が低いということは、その等級に割り当てられた金額帯の工事があるということです。千葉県の土木一式なら、A等級は8,000万円以上ですが、その下の等級にはそれぞれの金額帯があります。狙う等級の公告がどれだけ出ているかは、資格を取る前でも見られます。どこを見れば公告が集まるかは入札情報サービスの比較で見る5つの軸に書きました。
等級は「自社の属性」ではなく、発注者ごとの区分です
同じ会社が、県ではB、市ではA、国では最下位、ということが実際に起こります。等級は自社に1つ付くものではなく、申請した発注者ごとに1つずつ付くものだからです。
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ケンセツベース(ARCFEELGROUP株式会社)
土木・建築・設備の建設グループ(110名・3業種)が、自社でのAIツール8本の内製を主導しました。 評論ではなく、当事者としての実装記録を書いています。
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