その通知、一人にしか届いていませんか——直せる人より、気づける人を増やす
社内で使っているアプリは、毎朝七時に自分で点検をします。
つながっている先が生きているか、落ちているところがないか。結果は、まとめて通知が届きます。
つないでいるのは、会計のデータ、銀行の入出金、書類の保管先、メールの送信。どれも普段は意識しません。切れたときだけ、領収書の取り込みが進まない、送ったはずの通知が届いていない、という形で表に出ます。
最初、この通知は私にだけ届いていました。
気づける人が一人だと、その人が見ない日は誰も気づきません
作った本人が受け取るのは、自然な流れです。中身が分かるのは自分ですし、直すのも自分だからです。
ただ、これは気づける人が一人という状態でもあります。
朝から現場に出ている日。打ち合わせが続いた日。単純に流し読みした日。そういう日は、誰も拾いません。
しかも、この手の通知はたいてい「異常なし」です。毎朝それが届いていると、だんだん開かなくなります。開かなくなったころに、本物が来ます。
不具合そのものより、発覚が半日遅れることの方が実務では痛い、と思うようになりました。
だから、宛先を複数にしました
やったことは単純で、異常のときの通知を複数人に同時に送れるようにしました。
一人が見ていなくても、もう一人が見ます。二人とも見ていない日もありますが、それでも一人のときより短く済みます。
直せる人が増えたわけではありません。気づける人が増えただけです。それでも、体感はかなり変わりました。
ただし「全員に送る」は、別の失敗になります
では宛先を増やせば増やすほどいいかというと、そうではありませんでした。
関係のない人にも届くようにすると、まず読まれなくなります。読まれない通知は、無いのと同じです。むしろ「通知が多い会社」という空気ができて、本当に見てほしいものまで埋もれてしまいます。
現場の連絡でも同じことが起きていると思います。全員が入っているグループに全部流すと、だんだん誰も読まなくなる。
なので、送り分けることにしました。
分ける基準は「今、業務が止まるか」でした
分け方はいろいろ考えられますが、結局この一つに落ち着きました。
業務が止まるものは、複数人に送ります。誰かが拾って、その場で手を打つ必要があるからです。
知っておくといいものは、一人か、まとめて後から見られる場所に置きます。急いで直すものではないからです。
この二つを同じ扱いにしていたのが、そもそもの間違いでした。全部を大事に扱おうとすると、全部が同じ重さになって、結局どれも軽くなります。

同じ形は、建設会社の連絡にもありそうです
- 現場からの一報が、担当者一人の携帯にしか行かない
- 取引先からの連絡が、特定の人のメールにしか届かない
- 機械や設備の異常の知らせが、その担当者だけに来る
どれも、その人がいる間は何も起きません。困るのは、休んだ日と、辞めた後です。
これは能力でも体制でもなく、宛先の設定の問題だと思っています。誰かが決めたというより、最初に窓口になった人のところへ自然に集まっただけ、ということが多いです。
経理のように「一人しか触れない」という話は前に書きましたが、あれは権限の話でした。今回は、知らせが届く範囲の話です。似ているようで、直し方が違います。権限は絞る方向で整えますが、知らせは広げる方向で整えます。
宛先を一度、書き出してみる
社内で「何かあったら知らせが来る」ものを、三つ書き出してみてください。現場からの一報、機械の異常、システムの不具合、なんでも構いません。
そこに宛先を書き添えると、一人しか書けない行が、たいてい一つは出てきます。その行の人が休んだ日を想像すると、直す場所がはっきりします。
逆に、宛先の欄に十人以上並ぶ行もあるはずです。そちらは減らす側です。
増やす行と減らす行は、同じ表の中に混ざっています。
いただいた質問から
Q. 通知を増やすと、うるさがられませんか。
A. 中身を分けずに増やすと、そうなると思います。業務が止まる場合だけを複数人に送る形にすれば、回数はそれほど増えません。日々届くもののほとんどは異常なしの報告ですから、そちらを別扱いにするだけで印象が違ってきます。
Q. 全部を社長が見ておくべきでしょうか。
A. 全部は難しいと思います。それより、止まったときに自分にも届くかだけ確かめておくのがよいのではないでしょうか。中身が分からなくても、どこかで手が止まっていると知っているだけで、初動が違ってきます。
Q. 既製のツールを使っている場合、宛先は変えられますか。
A. 変えられるものが多いです。ただ、初期設定のまま使っていて、契約したときの担当者一人になっている、ということはよくあります。設定画面を一度開いて、宛先を見てみてください。
直せる人ではなく、気づける人を増やす
異常に強い会社にしようとすると、直せる人を増やす話になりがちです。それは時間がかかります。
ただ、気づける人を増やすのは、宛先を一行足すだけで済むことがあります。
気づくのが早ければ、直す人が一人でも間に合います。 逆に、気づくのが遅ければ、直せる人が何人いても後手に回ります。
まず、宛先を見てみるところからだと思っています。
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AUTHOR
﨑元 理安(ARCFEELGROUP株式会社 代表取締役)
土木・建築・設備の建設グループ(110名・3業種)の社長として、自社でのAIツール8本の内製を主導。 評論ではなく、当事者としての実装記録を書いています。
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