【AI活用事例】建設業の資金繰り——19社109口座の残高が、毎朝ひとつのLINEにまとまるまで
(導入事例 第3回)
先に数字です。2026年9月4日時点で、仕組みに載っている銀行口座は109口座、口座管理の対象はグループ19社。残高の記録は1,144件、借入の管理は43本、月ごとの借入のまとめは219件が溜まっています。口座・残高・借入・月ごとのまとめの件数は、本番データベースの実測です。
導入事例の第3回です。題材は前回までと同じく私たち自身のグループで、お客さまの数字は出しません。第1回の日報・勤怠、第2回の経費精算に続いて、今回は資金繰りです。
事例の属性
自社が題材なので、数字を丸めずに出します。
- 業種: 土木・建築・設備の3業種(建設グループ)
- 規模: グループ社員 約110名
- 導入したもの: キャッシュフローAI(自社内製)
- 導入時期: 前身の社内アプリから、2026年5月に現行の形へ移し替え
導入前: 数字は全部あるのに、並べるまでが仕事でした
うちは建設会社のグループで、導入前は会社ごとに資金の表が別々にありました。通帳の残高、借入の一覧、月次の資料。数字は全部ありました。ただ、会社ごとにばらばらで、足すまでに時間がかかる状態です。
「今いくらある?」と聞かれるたびに、経理の担当がそれぞれの表を開いて足し、口頭やLINEで返す。グループ全体で見ようとすると、会社ごとの表を一つに並べ直すところから始まります。全社の資金は、見える化できていない状態でした。並べ終わる頃には、考えるための時間が残りませんでした。
作るにあたって先に決めたのは、経理の入力を変えないことです。担当者はふだんどおりExcelに残高を書く。集めて並べるところから先を機械が引き受ける。この線があるので、入口で新しい操作を覚えてもらう場面がありません。

実測: 109口座の残高が、キャッシュフローAIに毎朝並びます
残高は入れた時点で、会社別の預金・借入・実質キャッシュに整い、朝の決まった時刻にLINEへ届きます。
実質キャッシュとは、預金と現金の残高から借入の残高を差し引いた額のことです。
数字は2026年9月4日に、本番のデータベースから直接数えたものです。
| 指標 | 実測値 |
|---|---|
| 口座管理の対象 | 19社 |
| 銀行口座 | 109口座 |
| 残高の記録 | 1,144件 |
| 借入の管理 | 43本 |
| 月ごとの借入のまとめ | 219件 |
入口は三つあります。画面の月次の残高フォームに直接入れる。残高のExcelをアップロードして、口座の突き合わせを見てから取り込む。そして、経理の担当がいつもの場所に保存したExcelを、Dropboxから自動で取り込む。
三つ目のDropboxの経路は、19社のうち4社に向けたもので、暗号化されたExcelにも対応しています。
出口は二つです。ひとつはLINE。会社ごとの預金・借入・差し引きの実質キャッシュと、グループの合計が、毎朝7時に経営側と経理担当のLINEへ届きます。届いたトークに「A銀行の残高は?」「借入の合計は?」と送ると、AIが数字を取りに行って答えます。もうひとつは画面で、預金の推移、銀行ごとの残高、借入の一覧、これから12か月の返済予定、AI分析を、タブで切り替えて見る形です。
AI分析は、過去12か月の預金の動きと借入の一覧を読ませて、資金の使い道の偏りや、返済が集まる時期を文章にします(見たいときに画面から実行します)。推移の画面にある月次の要約は別の機能で、6か月ぶんを読ませます。数字を並べるまでを機械が、その先の「では、どうするか」を人が持つ分担なんですよね。
正直な話: 合計に、まだ入っていない会社が混ざっていました
0と出ていた会社の残高は、実際にはまだ誰も入れていませんでした。
つまずいたところも、順に並べておきます。
作ってしばらく経った頃、ある会社の預金が「0」と出ていました。残高が0だったのではありません。その月の入力がまだだっただけで、合計の中に、未入力が0円のまま混ざっていました。
いまは毎朝の通知で、未入力の会社を「残高未入力」と出し、見出しに「最新入力時点」と添える形にしています。顛末は毎朝、全社の現金が見えるようにしたらに書きました。
もうひとつは、言葉の方です。この仕組みを「キャッシュフロー予測」と呼んでいた時期がありました。実装にあるのは、預金の推移を見えるようにすることと、借入の返済予定を12か月ぶん並べることで、先の入出金を予測する機能は作っていません。2026年9月に、ツール画面と説明文の表記を実装どおり「資金推移の見える化/返済額の見通し」に直しました。作っていないものを名乗らない。ここは、たぶんずっと守る線だと思っています。
通知の宛先でも一度つまずいています。毎朝の知らせを一人にだけ送っていたので、その人が見ない日は誰も気づかない。この頃の話はその通知、一人にしか届いていませんかにあります。
そして、Dropboxからの自動取り込みは、グループの4社向けに作った専用の経路です。他社さまの環境にそのまま持っていけるものではありません。同じ形が要る場合は、別に作ることになります。そこは隠さずに書いておきます。
費用対効果はどう見ているか
経営側への日次の資金報告は、ツールの紹介ページで「日次報告 30分→0分」と書いています。これは経理担当が表を開いて足して報告する時間を置き換える試算で、実測ではありません。試算と実測は分けて読んでいただけると助かります。
うちが実際に効いたと感じているのは、考え始めるまでの段取りが消えたことの方です。並べるところまでが朝のうちに終わっているので、「今どこが苦しいか」を見るところから一日を始められます。手元の現金の分け方は建設会社の手元資金はいくら必要かが一本、月末の締めを前に寄せる話は月末の締めが遅いのはなぜ?が別に一本あります。
この記事の件数の実測値は本番データベースの数字で、30分→0分だけが試算です。規模(約110名)と業種は会社の属性で、数えた数字ではありません。増えたぶんは実測データのページに毎月反映しています。
この事例から言えること
数字は集めに行かず、集まる場所を先に作る——第1回・第2回と、着地は同じでした。日報はLINEに一言送る、経費は束のままスキャンして送る、資金はいつものExcelに書く。どれも入口で人の手数を増やさなかったから、続いています。
資金ならではの学びは、合計を見る前に、19社のうちどこが入っていないかを確かめることです。全社の数字がひとつに並んだとき、うちはそれだけで安心しかけました。未入力が0で混ざっていた一件から、合計より先に欠けている会社を見るようになりました。
よくいただくご質問
相談会でよく出る三つです。
Q. 銀行と直接つないで、残高を自動で取っているのですか?
いいえ。銀行との直接の接続は使っていません。経理の担当がいつもどおりExcelに書いた残高を、画面から入れるか、Dropboxから取り込むかです。銀行側の仕組みに合わせて作り直すより、いまの経理の手の動きをそのまま入口にする方が、うちには早く回りました。
Q. 口座の数が多いほど、この形は効きますか?
効きます。うちの困りごとは「会社が多い」より「口座が多くて足すのに手間がかかる」の方が先でした。口座が1つ増えるたびに、足す手間だけが増えました。
Q. 社長がLINEで聞けるのは、どんなことですか?
入っている数字の範囲なら、会社ごとの預金、借入の合計、実質キャッシュのような問いに答えます。毎朝の通知では、残高が未入力の会社は「残高未入力」と表示します。LINEの質問応答は入っている数字を答える作りで、未入力を見分けて返す機能は入れていません。答えの根拠になる数字は画面で確かめられるので、数字の答え合わせは人がします。
毎朝のLINEと画面がどう動いているかは、無料60分相談会(前半30分=当社の実例と実画面の説明・後半30分=貴社の話を伺う質疑・オンライン・建設会社限定)で実物をお見せしています。
このテーマの記事はまとめ:建設業の経費精算・資金繰り・経営の数字に読む順番で並べています。
AUTHOR
ケンセツベース(ARCFEELGROUP株式会社)
土木・建築・設備の建設グループ(110名・3業種)が、自社でのAIツール8本の内製を主導しました。 評論ではなく、当事者としての実装記録を書いています。
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