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実務Q&A2026年9月9日

現場の残業時間はAIで自動計算できる?——LINEの打刻から36協定の上限まで、機械に見張らせた形

この記事は「実務Q&A」です。調べ物のための記事です。結論を先に書いています。読み物としての記事は、ブログ一覧の「読み物」からどうぞ。

「現場の残業時間を、AIで自動計算できませんか」——建設業の会社から伺うご相談です。先に答えを言い切ります。

現場の残業時間の自動計算は、AIの仕事というより「打刻が時刻で残る形にした先に、勝手についてくるもの」です。 うちの場合、職人さんがふだんのLINEに「出勤」「退勤」と送るだけ。その日の残業の分数まで機械が出し、月の合計が36協定の線に近づくとメールが届く形にしています。この記事では、その仕組みを「何を機械に任せ、何を人に残したか」の順にご説明します。

現場の残業時間は、AIでどこまで自動計算できますか?

ヘルメットをかぶり、作業着でタブレットを操作する男性(川沿いの屋外)

その日の残業の分数と、人ごとの月と年の合計までは自動で出ています。 要るのは、出勤と退勤の時刻がデータで残ることだけです。残業の計算そのものは足し算と引き算で、AIが賢いかどうかとはほとんど関係がありません。

うちの現場の打刻は、職人さんがふだん使っているLINEから送ってもらう形です(自社で作った建設日報アプリです)。届いた文章をAIが読んで、出勤・退勤・直帰・有給・有給の半日・夜勤明けの休みといった決まった種類に振り分け、時刻を取り出す。LINEから届いた打刻は、2026年4月11日から9月8日までに累計7,125件です(自社データベースの実測)。

ここまでが「AIの仕事」です。残業の分数は、その時刻から機械が数えるだけ。LINEで打刻を集める仕組みそのものはLINEで日報を出す仕組みの作り方に書いたので、この記事では時刻が残ったあとの話をします。

残業は、どう数えていますか?

うちは「1日の実働が8時間を超えた分」を残業として数えています。 会社の所定の時間が8時間より長くても、線は8時間。休憩は所定の時間の中で取る前提で、実働から引きます。

8時間にしたのは、法律の線に合わせるためです。「残業」には、会社が決めた所定の時間を超えた分と、法律の線を超えた分の二通りがあります。うちが数えているのは後者です。法律でいう時間外労働は、労働基準法で定められた法定労働時間(1日8時間・1週40時間)を超えた分を指します。うちのアプリは、このうち1日8時間の線で数えています(週40時間を超えた分は数えていません)。この違いは厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」のコラム「『所定』と『法定』の違い」に書かれています。

夜の時間は別枠です。22時から翌朝5時までの労働は「深夜」として、残業とは別の列に出す。午前休・午後休は、所定の時間を半分にして扱います(遅刻・早退を数えるのは通常の出勤日だけです)。有給の半日は、働いた側の打刻から実働を出します。どちらの場合も、残業の線は1日8時間超のまま変わりません。

決めごとは、これだけなんです。ややこしいのは計算ではなく、この線を「会社として先に決めておく」ことの方でした。ここが決まっていないと、道具を入れても月末の数え直しが残ります。

夜勤や日付をまたぐ勤務は、正しく数えられますか?

数えられます。ただし、そのための判定を後から足しました。 うちで一番つまずいたのはここです。21時に出勤して翌朝5時に退勤する人の「退勤」は、翌日の日付で届きます。何もしなければ、機械はどう扱うか。「今日、出勤なしで退勤だけした人」です。

そこで、退勤が届いたときに「今日の出勤がなく、昨日の出勤が退勤なしで残っている」なら、その退勤を昨日の勤務に寄せる判定を入れました。「21:00出勤 29:00退勤」のように、24時を超えた書き方で送られても、AIが読んで同じ道に乗せます。

ただし、寄せすぎると別の事故が起きるんです。以前、前日の朝に出勤した人が退勤を送り忘れ、翌日の夕方に送った退勤が前日に寄せられて、33時間の勤務として確定したことがありました。今は、出勤から20時間を超えていたら「打刻忘れ」とみなして寄せない、という上限を置いています。

夜勤の計算で実際に出た別の不具合——夜勤が0時間、残業が0時間と出ていた話——は建設会社の勤怠アプリのバグを直した話にそのまま書いています。

夜勤や日付をまたぐ勤務の数え方の図解。21時に出勤して翌朝5時に退勤する人の退勤は翌日の日付で届く。今日の出勤がなく昨日の出勤が退勤なしで残っていれば、その退勤を昨日の勤務に寄せる。出勤から20時間を超えていたら打刻忘れとみなして寄せない(以前33時間の勤務として確定したことがあった)。「21:00出勤 29:00退勤」のように24時を超えた書き方で送られてもAIが読んで同じ道に乗せる

建設業で残業が上限に近づいたら、誰が気づくのですか?

機械が先に気づいて、メールで知らせる形にしました。 上限の見張りは二段です。

一段目は、その日の残業。会社ごとに「1日の残業がここを超えたら知らせる」という線を管理画面で決めておき、超えた日だけ通知先のメールに届きます。線を決めていない会社には鳴りません。通知先を誰にするかは、それ自体が効く設定でした(その通知、一人にしか届いていませんか)。

二段目は、月と年の合計です。36協定とは、法定労働時間を超えて働いてもらうときに、会社と働く人の間で結んで労働基準監督署へ届け出る協定のことです(前掲の厚生労働省「わかりやすい解説」より)。時間外労働の上限規制では、原則は月45時間・年360時間が限度です。臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合(特別条項)でも、年720時間以内、単月100時間未満・複数月平均80時間以内(この二つは休日労働を含みます)、限度時間を超えられるのは年6か月まで、という枠が残ります。建設業には2024年4月から、この規制が適用されています(災害時の復旧・復興の事業だけは、月100時間未満と複数月平均80時間以内の部分が適用されません)。出典は厚生労働省「建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制」です。

うちのアプリは、このうち月45時間・年360時間・月100時間の3つを線にしています。人ごとに今月と今年の残業を足し上げます。月40時間で「あと何時間で45時間か」の知らせ、月45時間に達したらその旨の通知、月100時間に達したら緊急の通知、年360時間に達したらその旨の通知、という四つの知らせを出します。使っている線はこの3つだけで、年720時間や複数月平均80時間、週40時間を超えた分までは数えていません。協定の中身は会社ごとに違うので、線の全体は社労士さんにご確認ください。

月の勤怠をLINEから申請するときには、職人さん本人にも数字が見えます。その月の出勤日数・勤務時間・残業時間が、確認の文として返る形です。会社だけが数字を持つ形にはしていません。

この通知にも、直した不具合があります。サーバーの時計が日本時間ではなく世界標準時で動いていたため、月初の朝9時までの打刻が前の月に数えられ、集計月が1ヶ月ずれて通知を取りこぼすことがありました。今は日本時間で月を切っています。

上限の見張りは二段、の図解。一段目はその日の残業=「1日の残業がここを超えたら知らせる」という線を管理画面で決めておき、超えた日だけ通知先のメールに届く(線を決めていない会社には鳴らない)。二段目は月と年の合計=月40時間で「あと何時間で45時間か」の知らせ、月45時間に達したらその旨の通知、月100時間に達したら緊急の通知、年360時間に達したらその旨の通知。使っている線はこの3つだけで、線の全体は社労士さんに確認する

機械に任せなかったのは、どこですか?

打刻の抜けと、いつもと違う日の確認です。 足し算の側で困ったことは、うちではまだありません。人が見ているのは、その手前です。

退勤を送り忘れた日。途中で現場が変わった日。応援で入ってもらった人の分。こうした日は、数字の上では正しい顔をして並びます。うちは月末に、この例外の部分だけを人が確かめる形にしました。この考え方は日報から請求書は自動で作れるかに詳しく書いています。

もうひとつ、人に残しているのが「線の中身」です。36協定をどう結ぶか、特別条項を付けるか、休日労働をどう扱うかは会社ごとに違い、うちのアプリが決めることではありません。法令の判断は社労士さんにお願いしています。機械が持っているのは「決めた線に近づいたら知らせる」役だけ。

残業の数え直しは、どう減りましたか?

月末にまとめて数え直す作業が、月の途中で見える形に変わりました。 紙の出面表を事務所で集計していた頃は、残業の合計は月が終わってから出るものでした。今は打刻の時点で分数まで出ているので、月の途中でも人ごとの合計が見えます。

「今月この人は40時間に近い」と月半ばで分かるので、月末に数え直す代わりに、人繰りを先に相談できます。数字が増えたのではなく、出る時期が前に寄っただけです。締めが早くなる話の全体は月末の締めが遅いのはなぜ?にまとめています。

この記事は残業を「数える側」の話です。残業そのものを「減らす側」の話は、建設業の残業は3種類に分けて書きました。数えて見えるようになった数字を、どこから減らすかはあちらをご覧ください。

よくいただくご質問

Q. 職人さんに残業の申告をしてもらう必要はありますか?

ありません。申告ではなく、出勤と退勤の時刻から機械が計算します。直行や直帰も同じで、「直帰」と送れば退勤の時刻として扱う。職人さんに覚えてもらうことを増やさないのが、続く条件でした。

Q. エクセルの勤怠表でも、上限の見張りはできますか?

できます。人ごとの月の合計が出る列を作り、その列が40時間を超えたら色が変わる設定を入れれば、見張りの形はできます。うちの仕組みがやっていることも、本質はこれと同じなんです。違うのは、時刻を人が転記するか、打刻がそのまま入るかだけ。転記が月末に集中しているなら、そこから先に手を付ける方が効きます。

Q. 36協定を結んでいない、あるいは特別条項が無い場合はどうなりますか?

結んでいなければ、法定労働時間を超えて働いてもらうこと自体ができません(厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」に書かれています)。協定がある場合も、うちのアプリは月45時間・年360時間・月100時間の線で通知を出す作りなので、貴社の協定の中身に合わせて線を読み替える必要があります。協定の結び方そのものは社労士さんへご相談ください。この記事は、うちがアプリの中で何を数えているかの説明で、法令の解説ではありません。

Q. 既製の勤怠アプリを選ぶときは、何を聞けばいいですか?

うちは既製品を全部見たわけではないので、できる・できないは言えません。そのうえで、選ぶときに聞いてほしいのは二つあります。「夜勤の日付またぎをどう扱っているか」と「月の合計が上限に近づいたとき、誰にどう知らせるか」です。機能の一覧には出てきにくいのに、うちが実際につまずいたのはこの二つだったからです。

まず、先月の残業を誰がいつ数えたか、思い出してみてください

自動計算の前に、いまの残業の数字が「月末に誰が、何を見て」出しているかを、一度書き出すところからです。紙の出面表を転記しているなら、時刻がデータで残る形に変えるだけで、残業の計算はほとんど自動でついてきます。

うちの打刻の仕組みと、そこから残業や上限の通知がどう出ているかは、無料60分相談会(前半30分=当社の実例と実画面の説明・後半30分=貴社の話を伺う質疑・オンライン・建設会社限定)で実際の画面をお見せしています。うちの運用の数字は実測データのページで毎月更新しています。

このテーマの記事はまとめ:建設業の日報・勤怠・現場の情報に読む順番で並べています。

AUTHOR

ケンセツベース(ARCFEELGROUP株式会社)

土木・建築・設備の建設グループ(110名・3業種)が、自社でのAIツール8本の内製を主導しました。 評論ではなく、当事者としての実装記録を書いています。

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