工程表はAIでどこまで作れる?——建設会社が自分たちで作って分かったこと
この記事は「実務Q&A」です。調べ物のための記事です。結論を先に書いています。読み物としての記事は、ブログ一覧の「読み物」からどうぞ。
工程表をAIで作れないか、というご質問をいただくことが増えました。検索でも「工程表 自動作成」「工事 工程表 AI」あたりがよく調べられているようです。
私たちは土木・建築・設備の三業種をやっている建設会社で、この半年ほど、社内で使う道具を自分たちで作りながら回しています。工程表もその一つで、工程管理AIとして社内で使っています。以前ChatGPTで何ができるかを書いたときは「工程表を全体で組ませるのは無理でした」と正直に書きました。そのあと専用に作ってみて分かったことを、いただくご質問の形で並べます。
Q. 工程表は、AIで自動作成できますか?
「ボタンを押したら完成品が出てくる」という意味であれば、まだです。
出てくるのは叩き台までで、そこから人が直します。ただ、白紙から引くのと、叩き台を直すのとでは、かかる時間がまるで違いました。自動化というより、白紙をなくす道具だと思っていただくのが近いです。
Q. 何をもとに作るのですか。見積が要りますか?
見積があると早いです。工種も数量も、すでにそこに書いてありますから。
うちで気づいたのは、同じ工事の話を二回書いていたということでした。見積を作り、そのあと工程表を別のファイルで一から組み直していたわけです。今は見積を読み取って工種と数量を取り出し、会社の歩掛を当てて叩き台にしています。
見積が無い場合は、工種と日数を選んで組み始める形でも構いません。
Q. Excelで作った過去の工程表は、無駄になりますか?
いいえ、むしろ材料になります。
過去の工程表を取り込んで、その工事に実際に何日かかったのかを吸い上げる。それを重ねると、自社の標準の日数が溜まっていきます。教科書の歩掛ではなく、うちが実際にかけている日数です。
ここが溜まってくると、見積の段階でも効いてきます。この工種にうちは何日かけているか、が数字で言えるようになるので。
単価の側でも同じ形でした。単価表も、資料からではなく過去の見積書から溜まっていきました。
Q. 「二日延ばして」のような指示で直せますか
直せます。話し言葉で「内装を二日延ばして」「塗装は基礎が終わった翌日から」と伝える形にしてあります。
ただし、ここは分けて考えていただきたいところです。指示の意味を読み取るのはAIですが、日付の計算はAIにさせていません。 日を数える部分は別に用意してあって、そちらが正確に計算します。
理由は、AIの出す数字が正しい顔をして間違うことがあるからでした。日付は職人さんの手配に直結しますので、ここは曖昧にできません。変更はいったん下書きに出て、確かめてから保存する形にしています。
道具を選ぶときにも、この線引きは聞いてみる価値があります。どこまでがAIで、どこからが計算なのか。
Q. 一本ずらすと、後ろは全部動きますか
素直に全部が同じ日数ずれるわけではありません。
土日を挟めば日数が変わりますし、手配の入っている工事は動かせない。動かせないものにぶつかったら、そこで組み替えが要ります。この組み替えを手でやり直していたのが、いちばん時間を取られていたところでした。
工程表は最初に引くのが一回、直すのは工期の間ずっとです。回数が多いのは後ろ側の方でした。
Q. 遅れているかどうかは、どう分かりますか
最初に引いた工程表を残しておいて、今の状態と重ねます。
すると「なんとなく押している」が「この工事が三日遅れている」に変わります。現場監督の感覚が外れているという話ではありません。感覚は当たっているんです。ただ、感覚のままだと人に渡せない。数字になっていれば、社長にも、施主にも、職人さんにも同じものを見せられます。
Q. 職人さんへは、どうやって渡していますか
同じ場所を見てもらう形にしました。
紙で配っていた頃は、直すたびに刷り直していました。しばらくすると、どれが最新か誰も分からなくなります。古い工程表を見て動いている人がいる——これが一番こわい状態でした。
配り直しが楽になったこと以上に、「最新はどれか」を誰かが管理する仕事が消えたのが大きかったです。
Q. 現場の進み具合は、どうやって入れますか
現場からの一言を読み取って反映する形にしています。「軽鉄下地まで完了」くらいの書き方で通ります。
現場に新しい入力をお願いすると、まず続きません。日報をどう受けるかについては別のところにも書きましたが、送り方を増やさないのが前提だと考えています。

Q. 汎用のAIでは駄目でしょうか
全体を組ませるのは、うちでは無理でした。理由と、代わりに効いた頼み方は前に書いたとおりです。
短く言えば、組ませるのは無理でも、段取りを並べさせるのは効く。まずはそちらから試していただくのがいいと思います。
Q. 雨で動いたときは、どう直していますか
先に余裕を積むか、動いてから直すか。うちは動いてから直す方に寄せています。
予備日を先に入れておく考え方も、もちろんあります。ただ、それをやると全部の工事が少しずつ後ろに寄るんです。結果として、当初の工期が実際より長く見えてしまう。
それより、動いた日にその場で組み替えて、当初の線との差を見る形にしました。遅れを隠さずに数字で出す方が、施主にも職人さんにも説明しやすいというのが、やってみての実感です。
Q. 工程表を作れる人が、社内に一人しかいません。どうすればいいですか?
それが、うちで手を付けた一番の理由でした。
作れる人を増やすのは時間がかかります。先に効くのは、作れる人が直す回数を減らすことでした。引く作業より、引き直す作業の方が回数が多いので。
Q. 入れたら、すぐ楽になりますか
正直に言うと、なりませんでした。
最初のうちは、出てきた叩き台を疑いながら直していました。自社の日数が溜まっていない段階では、当然そうなります。楽になるのが先ではなく、溜めるのが先です。
Q. 何から始めるといいですか
過去の工程表を数本、同じ形に揃えてみるところからだと思います。
道具を決めるより先に、自社が実際に何日かけているかが分かります。そこが言葉になっていれば、どの製品を選んでも立ち上がりが早くなります。逆にここが人の頭の中にしかない状態では、たいてい同じところで止まります。
まとめ
工程表にAIを使うと聞くと「自動で作ってくれるのか」という話になりがちです。私たちも最初はそこを期待していました。
半年ほどやってみて値打ちがあったのは、白紙をなくすことと、動いたときに追随できることの二つでした。もし今、工程表のことで誰かが困っているとしたら、それは引く作業ではなく、引き直す作業の方ではないでしょうか。
このテーマの記事はまとめ:建設業の日報・勤怠・現場の情報に読む順番で並べています。
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AUTHOR
﨑元 理安(ARCFEELGROUP株式会社 代表取締役)
土木・建築・設備の建設グループ(110名・3業種)の社長として、自社でのAIツール8本の内製を主導。 評論ではなく、当事者としての実装記録を書いています。
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