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実務Q&A2026年8月4日

工程表はAIでどこまで作れる?——建設会社が自分たちで作って分かったこと

この記事は「実務Q&A」です。調べ物のための記事です。結論を先に書いています。読み物としての記事は、ブログ一覧の「読み物」からどうぞ。

工程表をAIで作れないか、というご質問をいただくことが増えました。検索でも「工程表 自動作成」「工事 工程表 AI」あたりがよく調べられているようです。

私たちは土木・建築・設備の三業種をやっている建設会社で、この半年ほど、社内で使う道具を自分たちで作りながら回しています。工程表もその一つで、工程管理AIとして自社で作りました。案件ごとに使う道具なので、毎日動かす日報や経費精算とは使い方が違います。以前ChatGPTで何ができるかを書いたときは「工程表を全体で組ませるのは無理でした」と正直に書きました。そのあと専用に作ってみて分かったことを、いただくご質問の形で並べます。

Q. 工程表は、AIで自動作成できますか?

「ボタンを押したら完成品が出てくる」という意味であれば、まだです。

出てくるのは叩き台までで、そこから人が直します。ただ、白紙から引くのと、叩き台を直すのとでは、かかる時間がまるで違いました。自動化というより、白紙をなくす道具だと思っていただくのが近いです。

 

工程表AIの値打ちを整理した図解。ボタンを押したら完成品が出るのはまだで、出てくるのは叩き台まで。値打ちは①白紙をなくす②動いたときに追随できるの二つで、すぐ楽になるわけではなく、自社の日数を溜めるのが先

Q. 何をもとに作るのですか。見積が要りますか?

見積があると早いです。工種も数量も、すでにそこに書いてありますから。

うちで気づいたのは、同じ工事の話を二回書いていたということでした。見積を作り、そのあと工程表を別のファイルで一から組み直していたわけです。今は見積を読み取って工種と数量を取り出し、会社の歩掛を当てて叩き台にしています。

見積が無い場合は、工種と日数を選んで組み始める形でも構いません。

見積から工程表の叩き台を作る流れの図解。見積を読み取って工種と数量を取り出し、会社の歩掛を当てて叩き台にする。見積が無い場合は工種と日数を選んで組み始める形でも構わない。過去の工程表を取り込むと自社の標準の日数が溜まっていく

Q. Excelで作った過去の工程表は、無駄になりますか?

いいえ、むしろ材料になります。

過去の工程表を取り込んで、その工事に実際に何日かかったのかを吸い上げる。それを重ねると、自社の標準の日数が溜まっていきます。教科書の歩掛ではなく、うちが実際にかけている日数です。

ここが溜まってくると、見積の段階でも効いてきます。この工種にうちは何日かけているか、が数字で言えるようになるので。

単価の側でも同じ形でした。単価表も、資料からではなく過去の見積書から溜まっていきました。

Q. 「二日延ばして」のような指示で直せますか

直せます。話し言葉で「内装を二日延ばして」「塗装は基礎が終わった翌日から」と伝える形にしてあります。

ただし、ここは分けて考えていただきたいところです。指示の意味を読み取るのはAIですが、日付の計算はAIにさせていません。 日を数える部分は別に用意してあって、そちらが正確に計算します。

理由は、AIの出す数字が正しい顔をして間違うことがあるからでした。日付は職人さんの手配に直結しますので、ここは曖昧にできません。変更はいったん下書きに出て、確かめてから保存する形にしています。

道具を選ぶときにも、この線引きは聞いてみる価値があります。どこまでがAIで、どこからが計算なのか。

どこまでがAIでどこからが計算なのかを分けた図解。「内装を二日延ばして」のような指示の意味を読み取るのはAI、日付の計算はAIにさせておらず、日を数える部分は別に用意してそちらが正確に計算する。変更はいったん下書きに出て確かめてから保存する

Q. 一本ずらすと、後ろは全部動きますか

素直に全部が同じ日数ずれるわけではありません。

土日を挟めば日数が変わりますし、手配の入っている工事は動かせない。動かせないものにぶつかったら、そこで組み替えが要ります。この組み替えを手でやり直していたのが、いちばん時間を取られていたところでした。

工程表は最初に引くのが一回、直すのは工期の間ずっとです。回数が多いのは後ろ側の方でした。

 

引くのは工期の中で一回だけなのに対し、引き直すのは工期の間ずっと続くことを示した図解。一本ずらしても後ろが同じ日数だけ動くとは限らず、動かせない工事にぶつかったら組み替えが要る。遅れは最初に引いた工程表を残して今と重ねると見える

Q. クリティカルパスは、工程表から自動で出せますか

出せます。前後関係と日数さえ入っていれば、遅れると全体が延びるつながり——クリティカルパスは機械が引きます。詰まるのは、その手前でした。

ただ、日を数えるのはAIではなく計算の側です。工程表の他のところと、同じ線引きにしてあります。

見積に並んでいるのは工種と数量で、「どの工事が終わらないと始められないか」の欄はありません。職人さんの手配、材料の納期、乾く時間。書類に残っていないことが多いところです。道具の側では、業種の型と過去案件の並びから、前後関係を先に入れておく形にしてあります。

もう一つ、遅れると全体が延びるつながりは、工期の途中で入れ替わります。一本ずらせば動かせない工事にぶつかって、組み替えが要る。組み替わると、効いてくるところも別の工種に移りました。貼り出して終わりではなく、組み替わるたびに工程管理AIが引き直します。

Q. 遅れているかどうかは、どう分かりますか

最初に引いた工程表を残しておいて、今の状態と重ねます。

すると「なんとなく押している」が「この工事が三日遅れている」に変わります。現場監督の感覚が外れているという話ではありません。感覚は当たっているんです。ただ、感覚のままだと人に渡せない。数字になっていれば、社長にも、施主にも、職人さんにも同じものを見せられます。

Q. 職人さんへは、どうやって渡していますか

同じ場所を見てもらう形にしました。

紙で配っていた頃は、直すたびに刷り直していました。しばらくすると、どれが最新か誰も分からなくなります。古い工程表を見て動いている人がいる——これが一番こわい状態でした。

配り直しが楽になったこと以上に、「最新はどれか」を誰かが管理する仕事が消えたのが大きかったです。

Q. 現場の進み具合は、どうやって入れますか

現場からの一言を読み取って反映する形にしています。「軽鉄下地まで完了」くらいの書き方で通ります。

現場に新しい入力をお願いすると、まず続きません。日報をどう受けるかについては別のところにも書きましたが、送り方を増やさないのが前提だと考えています。

 

建築の平面図の上に白いヘルメットと黄色い鉛筆と三角スケールが置かれ、水色のシャツの袖の手が定規を押さえて鉛筆で線を引いている写真

Q. 汎用のAIでは駄目でしょうか

全体を組ませるのは、うちでは無理でした。理由と、代わりに効いた頼み方は前に書いたとおりです。

短く言えば、組ませるのは無理でも、段取りを並べさせるのは効く。まずはそちらから試していただくのがいいと思います。

Q. 雨で動いたときは、どう直していますか

先に余裕を積むか、動いてから直すか。うちは動いてから直す方に寄せています。

予備日を先に入れておく考え方も、もちろんあります。ただ、それをやると全部の工事が少しずつ後ろに寄るんです。結果として、当初の工期が実際より長く見えてしまう。

それより、動いた日にその場で組み替えて、当初の線との差を見る形にしました。遅れを隠さずに数字で出す方が、施主にも職人さんにも説明しやすいというのが、やってみての実感です。

Q. 工程表を作れる人が、社内に一人しかいません。どうすればいいですか?

それが、うちで手を付けた一番の理由でした。

作れる人を増やすのは時間がかかります。先に効くのは、作れる人が直す回数を減らすことでした。引く作業より、引き直す作業の方が回数が多いので。

Q. 入れたら、すぐ楽になりますか

正直に言うと、なりませんでした。

最初のうちは、出てきた叩き台を疑いながら直していました。自社の日数が溜まっていない段階では、当然そうなります。楽になるのが先ではなく、溜めるのが先です。

Q. 何から始めるといいですか

過去の工程表を数本、同じ形に揃えてみるところからだと思います。

道具を決めるより先に、自社が実際に何日かけているかが分かります。そこが言葉になっていれば、どの製品を選んでも立ち上がりが早くなります。逆にここが人の頭の中にしかない状態では、たいてい同じところで止まります。

まとめ

工程表にAIを使うと聞くと「自動で作ってくれるのか」という話になりがちです。私たちも最初はそこを期待していました。

半年ほどやってみて値打ちがあったのは、白紙をなくすことと、動いたときに追随できることの二つでした。もし今、工程表のことで誰かが困っているとしたら、それは引く作業ではなく、引き直す作業の方ではないでしょうか。

このテーマの記事はまとめ:建設業の日報・勤怠・現場の情報に読む順番で並べています。


まず全体像を知りたい方も、自社の工程管理の回し方を個別に相談したい方も、相談する(フォーム・送信後に折り返し)をご利用ください。建設業のAI屋として何をして、何をしないかはこちらにまとめています。

AUTHOR

ケンセツベース(ARCFEELGROUP株式会社)

土木・建築・設備の建設グループ(110名・3業種)が、自社でのAIツール8本の内製を主導しました。 評論ではなく、当事者としての実装記録を書いています。

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