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読み物2026年8月1日

建設業でChatGPTは何に使える?——一年前に「無理です」と答えた仕事が、割り方を変えたら効いた話

「ChatGPTって、うちの仕事だと何に使えるんですかね」

一年前の私なら、こう答えていました。「見積もりは無理ですね」と。

今は答えが変わっています。見積もりの拾いは、やっぱり無理でした。ただ、同じ「見積もり」の中に、はっきり効いた部分があったんです。駄目だったのは仕事そのものではなく、私の割り方でした。

私たちは土木・建築・設備をやっている建設会社で、この半年ほどは社内で使う道具を自分たちで作りながら回しています。経営の場面で効くところは前に五つ挙げました。あれは「どこで使うか」を並べた記事でした。今回はその手前の話で、なぜ同じ仕事で効いたり効かなかったりするのかを書きます。

見積もりで起きたこと

図面を渡して数量を出してもらう。これは今でも使いものになりません。拾えないというより、拾えたものが合っているかを確かめる手間が、自分で拾うのと変わらないんですよね。この線引きは見積もりの記事に詳しく書きました。

ところが、しばらくして別の頼み方を試しました。

過去の見積書を何通か渡して、「うちはどういう順番で項目を並べているか、諸経費をどこに置いているか、どんな言い回しを使っているか」を書き出してもらったんです。数量には一つも触らせていません。それでも、若手が新しく一式をこしらえるときの下敷きとしては、ずいぶん役に立ちました。

拾いは駄目。型を出すのは効く。

同じ「見積もり」という言葉でくくっていたせいで、まとめて駄目だと決めつけていたわけです。ここで考えが変わりました。

「見積もり」「工程表」「現場写真」をそれぞれ一段割ると、効かない側(図面から数量を拾う・全体を組ませる・どの工事のいつの写真か)と効く側(過去の見積から型を出す・工種の標準の段取りを並べる・何が写っているかを一行で)に分かれることを示した図解

割り方を変えると、答えが変わる

同じことが、ほかでも起きました。

工程表。 全体を組ませるのは無理でした。作業の順番を並べるところまではそれらしいものが出るんですが、実際に工程が動く理由は表の外にあります。職人さんの手配がいつ付くか、雨がどう入るか、隣の家の都合で朝八時から音を出せるか。そういう事情は、こちらが一つずつ教えないかぎりどこにも書かれていません。教え終わるころには、自分で引いた方が早くなっています。

ただ、**「この工種の標準的な段取りを、抜けがないように並べて」**なら別です。若手が段取りを組む前に一度目を通す紙としては、十分に使えました。

現場写真。 どの工事のいつの写真かを判断させるのは無理です。写真の中にその情報がありませんから。でも、**「この写真に何が写っているかを一行で書いて」**なら返ってきます。それを人が現場ごとの箱に入れていく形なら、作業は軽くなります。

三つとも、大きい単位で「駄目だ」と判定していたものが、一段割ると使える面を持っていたという話でした。

なぜ割ると効くのか

割った先が使えるかどうかは、だいたい次の三つで決まっていました。

効いた側 効かなかった側
答えの形が決まっているか 「項目の並び順を書き出して」 「いい感じに見積もって」
材料がこちらの手元にあるか 過去の見積書・録音・社内の文面 職人さんの空き具合・近隣の事情
間違いに気づけるか 読めば違和感で分かる 数量は数え直さないと分からない

大きい単位のままだと、たいてい二段目か三段目で引っかかります。「経費精算をAIで」「安全書類をAIで」と会議で話しているうちは、まだ判定できる大きさになっていない、ということなんだと思います。

とくに三段目は見落としがちでした。間違いに気づけない頼み方をすると、確認のために人が全部やり直すことになって、手間がちっとも減りません。

屋外の現場で、反射ベストとヘルメット姿の職長が図面を手に作業員2名へ指示している朝礼の場面

この「割る」作業、建設の人はもともとやっています

書きながら思ったんですが、これは新しい能力ではないですよね。

図面があって、納まりを決めて、工種で分けて、取り合いを詰めて、誰がどこまでやるかを決めてから動く。順番を決めずに現場を始める人はまずいません。

ところが、同じ会社の社内業務は、けっこう曖昧なまま回っています。 誰がやるかは何となく決まっていて、手順は人によって違って、判断の基準は口頭で伝わっている。それでも回ってしまうからなんでしょうね。

AIがうまく使えないとき、足りていないのはAIの知識ではなくて、その仕事の図面がまだ引かれていないことの方が多い気がしています。現場でやっている割り方を、そのまま事務所の仕事に持ち込めばいい。それが準備になります。

割ったあとに、渡しておくもの

「プロンプトのコツ」の話にするつもりはありません。うちで効いたのは、聞き方の工夫よりも聞く前に渡しておくものでした。三つあります。

言葉。 出面、常傭、歩掛。建設の言葉はそのままだと通じません。用語の一覧を先に渡すだけで、返ってくるものが変わります(用語の記事に書きました)。

材料の形。 元がエクセルのものはエクセルのまま。わざわざPDFにすると数字が「見た目」になって、列の対応を推測されてしまいます。人が形を整えてから渡すのは、いちばんもったいないやり方でした(渡し方は書類の記事で)。

答えの形。 「まとめて」ではなく「A4一枚、見出しは三つ、最後に確認事項を箇条書きで」。答えの形をこちらが決められない仕事は、そもそも人に頼んでも同じように揉めるはずでして。

AIに聞く前に渡しておく三つ(言葉=用語の一覧/材料の形=エクセルはエクセルのまま/答えの形=A4一枚・見出し三つ)と、会社で使うときの順番(先に契約の形を決め、社内の紙はその後で短く)を示した図解

会社で使うなら、順番が一つだけあります

個人で試すのと、会社で使うのは別の話です。

先に契約の形を決める。 無料の枠で触ってみるのは構いませんが、会社の資料を入れる段になったら、法人向けの契約で、入力したものが学習に使われない形にしておく。ここを先にやると、後の話がずいぶん軽くなります。

社内の紙は、その後で短く作る。 うちにもありますがA4一枚です。禁止事項を並べるより、**「これは自分たちのものか、他人から預かったものか」**の一問に絞った方が現場で使えました(社内ルールの記事もどうぞ)。

順番を逆にして、契約を決める前に長い規程をこしらえると、たいてい誰も読まないものができあがるんじゃないでしょうか。

作業着姿の人が、スマートフォンを指で操作している手元の写真

最初に割ってみるなら

いちばん軽いのは、やはり文章まわりでした。挨拶文、協力会社さんへの案内、近隣へのお知らせ、求人の文面。答えの形が決まっていて、材料が手元にあって、出てきたものを読めば違和感で分かる。三つとも満たしています。

地味ですけど、失敗しても誰も困りません。うちも最初はそこからでした。

逆に、いきなり数量や金額から入ると三つ目でつまずきます。合っているかを確かめるために全部数え直すはめになり、「AIを入れたのに手間が減らない」という感想だけが残ってしまう。ここは順番の問題だと思っています。

ヘルメットをかぶり直す作業着姿の職人の写真

いただく質問から

Q. 無料のままでも使えますか?

試す分には十分だと思います。ただし、会社の資料を入れる段階になったら契約の形を先に決めてください。無料と有料の差は、機能よりも入れたものがどう扱われるかの方が大きいところです。

Q. 現場の人にも使わせた方がいいですか?

うちは事務所側から始めています。現場に新しい手順を一つ頼むと、そこが止まる場所になりやすいので。現場で効かせたいなら、今ある道具(メールやチャット)の中に入れる形を考えた方が続きます。

Q. どのくらいで慣れますか?

知っているだけなら一日で足ります。そこから先、任せられるところまでは反復が要るんですよね。最初の数ヶ月は成果を出す期間というより、どこで割れば効くのかを見つける期間だと思っておくと、途中でがっかりしません。

「使えますか」ではなく「どこで割れますか」

聞かれたときは、たいていこう返しています。

その仕事、もう一段細かく割れませんか。 割った先のどれか一つでも、答えの形が決まっていて、材料が手元にあって、間違いに気づける。そういう面があれば、たぶんそこから使えます。

一年前の私は、仕事の名前だけを見て「無理です」と答えていました。名前では決まらなかった、というのが今のところの結論です。

このテーマの記事はまとめ:社員とAI、ChatGPTの使い方、AIの担当者に読む順番で並べています。


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AUTHOR

﨑元 理安(ARCFEELGROUP株式会社 代表取締役)

土木・建築・設備の建設グループ(110名・3業種)の社長として、自社でのAIツール8本の内製を主導。 評論ではなく、当事者としての実装記録を書いています。

ARCFEEL × AI について

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