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読み物2026年7月28日

「これ、ChatGPTに貼っていいんでしょうか」——学習の心配と、預かりものの心配は別の問題です

「これ、ChatGPTに貼っていいんでしょうか」

社内でこう聞かれることがあります。

正直に書くと、今のうちでは、たいてい「いいですよ」と答えています。

私たちは建設会社で、この半年ほどはAIツールを自分たちで作って回してきました。自分たちで作っている以上、情報がどこへ行くかは気にしている方だと思うのですが、それでも「いいですよ」が多いのです。

理由と、それでも残っている線引きの話を書きます。

事務所で三人がノートパソコンの画面を一緒に覗き込んでいる写真

心配事の大半は、道具を決めた時点で終わっていました

社内ルールを作ろうとすると、つい「何を貼っていいか」の一覧から書き始めたくなります。私たちも最初はそう考えました。

でも実際に先だったのは、会社として使う道具を決めることでした。

個人が無料で使うものと、会社として契約して使うものでは、入れたデータの扱いが変わります。うちは法人向けの契約で、入れた内容が学習に使われない形で運用しています。設定も一度確認しました。

そこまでやると、心配事の大半が消えます。

「これを貼ったら、どこかで他社に出てしまうのではないか」——社内で一番多かった不安は、これでした。道具と契約の側で片が付く話だったので、中身を一つずつ選り分ける作業に時間を使うのをやめました。

ここは会社ごとに違うので、断定はできません。使う道具と契約の形と設定によって変わります。ただ、一覧を作る前に、規約と設定画面を一度だけ見る。この順番にすると、そのあとの話がとても短くなります。

会社で使うAIの入り方は、大きく三つに分かれます。整理は建設会社が使うAIは3種類にまとめました。

作業着の人が、図面と仕上げ材の見本をスーツの相手へ手渡している手元の写真

それでも残った線引きは、一つだけでした

では何でも貼っていいのかというと、そうではありません。

うちに残っている基準は、一つだけです。

それは自分の情報か、他人から預かった情報か。

自社の日報。自社の見積の考え方。自社で撮った現場写真。ここは迷いません。

元請けから受け取った資料。協力会社の単価。発注者の図面。持っているだけで、渡す権利までは持っていないものです。

言われてみれば当たり前なのですが、私たちもここに行き着くまでは「AIに読ませて大丈夫か」という一つの問いで考えていました。

学習の心配と、預かりものの心配は、別の問題です

ここが一番書きたかったところです。

多くの記事は「入れた情報が学習に使われるかどうか」を中心に書かれています。大事な話ですし、うちもそこから入りました。

でも、この二つは別の問題です。

  • 学習の話——AIの提供元との間の話。契約と設定で解決できる
  • 預かりものの話——取引先との間の約束。AI側をいくら整えても消えない

元請けとの契約書には、たいてい「第三者に開示しない」という条項があります。ここでいう第三者は、AIの提供元が学習に使うかどうかとは関係ありません。渡した時点の話です。

だから、学習の心配が消えた会社ほど、この二つ目を見落としやすいのではないかと思っています。私たちも、契約を整えたことで一度気が緩みました。

「安全な道具を用意したから、あとは自由に」ではなく、道具の安全とは別に、預かりものの線が残る。うちの社内では、この一行だけ強調しています。

学習の心配は会社としての契約と設定で消えるが、預かりものの心配は取引先との約束なのでAI側を整えても消えない、という二つの線を分けた図解

「これを相手に見せるとき、渡していいですかと聞く必要があるか」で分ける判定の図解。聞く必要がなければ自分たちのもの、あれば預かりもの

分け方は、三つで足ります

一覧にすると、こうなりました。

分類 中身 扱い
自分たちのもの 自社の日報・報告文・社内資料・自社で撮った写真・自社の見積の考え方 そのまま使ってよい
預かりもの 元請けの資料、協力会社の見積・単価、発注者の図面、社員や取引先の個人情報 相手との約束を先に確認する
契約で出せないもの 守秘の対象と明記されているもの 使わない

真ん中が判断の要るところですが、判断の仕方は難しくありません。「これを相手に見せたら、渡していいですかと聞く必要があるか」。聞く必要があると感じたら、それは預かりものです。

うちでは、判断が割れたものは使わない側に寄せています。急ぎの仕事を1本速くするために、取引先との関係を賭ける理由がないからです。

建設会社で、特に引っかかるところ

よその業種のルール雛形には載っていない項目です。ここは自社で足すしかありません。

元請けから預かった資料。 守秘の条項の書き方は契約ごとに違います。一度、手元の契約書を見てみると早いです。

協力会社の見積。 単価は先方の商売そのものです。社内で回すのと、外の道具に渡すのとでは、意味が違います。

現場写真。 自社で撮ったものなので「自分たちのもの」に入りますが、作業員の顔、車のナンバー、他社の看板、住所の読める表札が写り込みます。ここだけは、送る前に一度見る習慣にしています。

青空の下、資材置き場にとまっているバックホウの写真

禁止から書き始めると、たぶん読まれません

もう一つ、順番の話です。

やってしまいがちなのが、禁止事項から書くことです。これを貼るな、あれを貼るな、と並べる。書いた側は仕事をした気になりますが、読む側には「使うな」としか読めません。読んだ人は、使うのをやめるか、黙って使うかのどちらかです。

だから私たちは、使っていいものを先に書きました

順番を変えるだけで、読んだ後の行動が変わります。「これは使っていいのか」と分かると、まずそこから試す。試している人がいると、次の相談が出てきます。「この場合はどうですか」と聞かれるようになれば、ルールは生きています。

社員がAIを使わない理由は、抵抗ではなく土台の問題であることが多い、という話は以前の記事に書きました。禁止だけのルールは、その土台を自分で崩してしまう気がしています。

禁止から書くと「使うのをやめるか、黙って使うか」になり、使っていいものから書くと「この場合はどうですか」と相談が出てくる、書く順番の対比図解

一枚にまとめるときの項目

私たちが一枚にまとめたときの項目です。A4一枚に収まります。

  • 何のために使うのか(一行)
  • 使っていい道具(会社が契約したもの。個人の契約では業務のものを扱わない)
  • 自分たちのもの/預かりもの/契約で出せないもの
  • 出てきたものを、そのまま社外に出さない(誰かが必ず目を通す)
  • 迷ったときに聞く相手(部署名ではなく、人)
  • 見直す頻度(半年に一度で十分です)

四つ目は、AIに任せる範囲と人が決める範囲の話につながります。ここは議事録AIの記事で書いたので、そちらに譲ります。

長くしないことが大事です。細かく書くほど、読まれなくなります。

作業着姿の社員が事務所の机で図面と住宅模型を囲んで打ち合わせている写真

よくある質問

Q. 社員が個人のスマホで無料版を使っているようです。すぐ禁止すべきでしょうか。

A. 禁止する前に、会社として使える道具を用意する方が先だと思います。禁止だけを先にすると、使わなくなるのではなく、見えなくなります。急ぎの見積の文面を家で打ち込む——悪気はなく、早く終わらせたいだけです。見えている状態の方が、まだ手が打てます。

Q. 学習に使われない契約なら、本当に何を入れても大丈夫ですか。

A. 提供元との関係ではそう考えて運用していますが、取引先との約束は別に残ります。元請けの資料や協力会社の単価は、学習の有無にかかわらず、渡していいものかどうかを先に確認してください。ここが本文で一番お伝えしたかったところです。

Q. ルールは誰が作ればいいですか。

A. 情報システムの担当者がいない会社の方が多いと思います。その場合は、実際にAIを使っている人が三人ほど集まって、直近の一か月で迷った場面を出すところから始めるのが早いです。想像で書いた禁止事項より、実際に迷った場面の方が、そのままルールになります。

聞き方が変わりました

以前は「これ、貼っていいですか」と聞かれていました。

今は「これ、うちのものでしたっけ」と聞かれます。

同じことを聞いているようで、判断の速さがまるで違います。前者は毎回考え込みますが、後者は数秒で答えが出ます。

うちの場合はどうか、で迷ったときは、まず社内で一番AIを使っている人に、この一か月で迷った場面を聞いてみてください。ルールの下書きは、だいたいそこにあります。

このテーマの記事はまとめ:建設会社のAIとセキュリティに読む順番で並べています。


まず全体像を知りたい方は建設会社のAI導入 30分説明会へ。社内ルールの作り方を個別に相談したい方は無料相談をご利用ください。AI顧問が何をする仕事かはこちらにまとめています。

AUTHOR

﨑元 理安(ARCFEELGROUP株式会社 代表取締役)

土木・建築・設備の建設グループ(110名・3業種)の社長として、自社でのAIツール8本の内製を主導。 評論ではなく、当事者としての実装記録を書いています。

ARCFEEL × AI について

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