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読み物2026年7月27日

議事録AIは建設業で使えるのか——半年使って分かった、任せられるところと人が要るところ

私たちは、土木・建築・設備の3業種、約110名の建設会社を経営しています。建設業は2005年の創業から続けてきて、この半年ほどは、社内で使うAIツールを自分たちで作りながら回しています。

打ち合わせが終わって、事務所に戻る車の中。

「あれ、あの件、いつまでにって言ってたっけ」

こういうこと、ありませんか。私はしょっちゅうありました。記憶が新しいうちに書こうと思っているのに、戻ったら電話が鳴って、次の予定が入って、気がつくと1週間経っている。それで、次の打ち合わせで「前回決まった話」から始まって、少し焦る。

議事録は、書けば済む話です。でも、書く時間がどこにも無いんですよね。

この半年、打ち合わせの録音から議事録を作る仕組みを社内で使ってきました。かなり助かっている一方で、全部は任せられないということもはっきりしてきたので、その線引きを書いてみます。

木の机を上から見た写真。ライトグレーの作業着の人がノートパソコンに手を置き、向かいの同じ作業着の人がクリップボードの白紙にボールペンで書き込んでいる。机には白い電卓と黒いタブレット、コーヒーが二杯置かれている

録音を文字にするところは、もう心配いりません

先に結論から言うと、音声を文字にする部分は、そのまま使えるレベルになっています。

数年前の音声認識とは別物です。1時間の打ち合わせをそのまま文字にして、読めば内容が分かる。名前や専門用語が少し違うことはありますが、話の筋が分からなくなるようなことは、まず起きません。

なので、「AIで議事録」と聞いて心配される「そもそも聞き取れるの?」という点は、あまり気にしなくていいと思います。

問題は、その先でした。

つまずいたのは、長さでした

最初にぶつかったのが、打ち合わせの長さです。

短い打ち合わせなら何の問題もありません。ところが、1時間を超える会議になると、そのままAIに渡しても上手くいかない。途中で処理が止まったり、後半の話が要約からごっそり抜け落ちたりしました。

人間でいえば、1時間ぶんの話を一度に聞かされて「はい要約して」と言われているようなものです。前半の細かい話は、そりゃ薄くなります。

なので、長い録音は区切って処理して、区切ったぶんの要約をもう一度まとめ直す、という形に作り直しました。地味な話ですが、これで1時間の打ち合わせが最後まで抜けずに議事録になるようになりました。

ここは「AIが賢いかどうか」ではなく、渡し方の問題でした。長い会議で試して駄目だった、という話を聞くことがありますが、渡し方を変えると結果が変わることは多いと思います。

長い録音の渡し方を変えた図解。1時間ぶんをそのまま渡すと途中で処理が止まったり後半の話が要約からごっそり抜けたりする。区切って処理し、区切ったぶんの要約をもう一度まとめ直すと、1時間の打ち合わせが最後まで抜けずに議事録になる

文字は合っているのに、議事録が意味不明になる

もうひとつ、建設の打ち合わせならではのつまずきがありました。

文字起こしは正確なのに、出てきた議事録が意味不明になるんです。原因は、建設の打ち合わせには主語がないからでした。

「あそこ、来週から入れるようにしといて」
「例の件、先方が難しいって」
「あれ、図面の方が変わってるから」

その場にいる人は全員分かります。でも、文字だけ見たAIには「あそこ」も「例の件」も分かりません。結果、当たり障りのない、何も決まっていないような議事録が出てきます。

対処はわりと単純で、現場名や工事名、よく出る略語を先に渡しておくことでした。うちの現場の呼び方をAIが知っていれば、「あそこ」を推測してくれる確率が上がります。この、言葉が通じないという問題はAIに現場の言葉が通じないときの対処にも書きましたが、議事録では特にはっきり出ます。

それでも指示語だらけの場面は残ります。そこは人が直します。

建設の打ち合わせに主語がないことを示した図解。「あそこ、来週から入れるようにしといて」「例の件、先方が難しいって」「あれ、図面の方が変わってるから」。その場にいる人は全員分かるが、文字だけ見たAIには分からない。現場名・工事名・よく出る略語を先に渡しておく

「書き起こす・まとめる・決める」で線を引きました

半年使って落ち着いたのが、この3つの区切りです。

書き起こす——ここは完全に任せています。人が触りません。

まとめる——ここも任せていますが、出てきたものを人が読みます。話の重みづけがずれていることがあるからです。世間話が長かった打ち合わせだと、その部分が立派にまとまっていたりします。

決める——ここは人がやります。誰が、いつまでに、何をするのか。この3つだけは、AIが書いたものをそのまま採用しません。

理由は、AIが間違えるからというより、決めごとは打ち合わせの場で確定していないことがあるからです。「じゃあそっちで確認しといて」で終わった話を、AIは「◯◯社が確認する」と書きます。実際には誰も引き取っていないのに、議事録上は決まったことになる。これが後で一番困ります。

だから、議事録の一番下にある宿題リストだけは、必ず人の目を通してから配ります。逆に言えば、そこ以外はほぼ手を入れていません。

議事録を三つに区切って線を引いた図解。書き起こすは完全に任せて人が触らない、まとめるは任せたうえで人が読む、決めるは人がやる。理由はAIが間違えるからではなく、「そっちで確認しといて」で終わった話をAIが「◯◯社が確認する」と書いてしまうから

「録音していいですか」の一言が、実は一番のハードル

技術の話より、こちらの方が実務では大きいかもしれません。

社内の打ち合わせなら、そう問題にはなりません。でも、相手のいる打ち合わせで録音するときは、一言お断りするのが筋です。

これを言い出しにくくて止まってしまう、というのが実際のところではないでしょうか。私も最初はそうでした。

やってみて分かったのは、理由をセットで言えば、たいてい嫌がられないということです。「議事録を作るので録音させてください、後でお送りします」と言うと、むしろ歓迎されることが多い。議事録が来るなら、相手も自分でメモを取らなくて済みますから。

あとは、録音を残す期間を先に決めておくことです。うちは、議事録ができたら音声そのものは残さない運用にしています。この決めがないと、なんとなく溜まっていって、あとで扱いに困ります。

録音の断り方についての図解。止まるのは技術の手前で、相手のいる打ち合わせでは言い出しにくい。理由をセットで「議事録を作るので録音させてください、後でお送りします」と言えばたいてい嫌がられない。もう一つ、音声を残す期間を先に決めておく

議事録の先に、もう少しあります

やってみて意外だったのは、議事録が「読むもの」だけで終わらなかったことです。

同じ録音から、次の打ち合わせの資料のたたき台や、宿題の一覧を出せます。もともと同じ内容を人が3回書き直していたわけで、そこが1回で済むようになりました。

こういう「ひとつの入力から複数の出口を作る」考え方は、AIに小さい担当を持たせるという話とつながっています。議事録という仕事を任せたというより、打ち合わせの後始末という一連の仕事を任せた、という感覚に近いです。

これから試す会社が、つまずかない順番

もし社内で試すなら、この順番が安全だと思います。

まず、自社だけの打ち合わせで試す。社内の定例会議あたりが一番いいです。相手への断りが要らず、多少おかしな議事録が出ても誰も困りません。

次に、現場名や略語を渡してから、もう一度やってみる。1回目とどれくらい変わるかを見ておくと、この道具の性格が分かります。

そのうえで、決めごとの欄だけは人が直すと決めてしまう。ここを曖昧にしたまま外に配ると、後で行き違いが起きます。

無料で試せるものもたくさんありますので、まずは1回、社内会議で回してみるのが早いと思います。それで「使えそうだ」となってから、どこまで任せるかを決めれば十分です。

よくある質問

Q. 無料のツールで足りますか?

A. 試す段階では十分だと思います。短い打ち合わせを文字にして、まとめてもらう。ここまでは無料の範囲でもかなりできます。長い会議を安定して扱いたい、社内の言葉を覚えさせたい、他の書類とつなげたい、となってきた段階で、有料や自社向けの仕組みを検討すればいい話です。AIの利用料がどう請求されるかは、先に知っておくと迷いません。

Q. 専門用語や現場名が正しく出てきません。

A. よく出る言葉を一覧にして先に渡しておくと、かなり改善します。工事名、現場の通称、社内の略語、取引先の会社名あたりを20〜30個も渡せば体感が変わります。一度作れば使い回せますので、最初に一覧を作る時間は元が取れます。

Q. 録音データは残しておくべきですか?

A. 目的次第ですが、残す期間を先に決めておくことをおすすめします。何のために残すのか(言った言わないの確認か、後で聞き返すためか)が決まると、期間も自然に決まります。決めないまま溜め続けるのが、一番よくない状態だと思います。

打ち合わせの後始末から始めるのは、悪くない一歩です

AI導入を何から始めるか迷っている会社に、私は議事録を勧めることがあります。

理由は、失敗しても誰も困らないからです。おかしな議事録が出てきても、人が書き直せばいいだけ。現場が止まることも、請求が間違うこともありません。それでいて、任せる/確認する/人が決める、という線引きの練習にはちょうどいい。

まずは次の社内会議を1本、録音してみるところからでいかがでしょうか。

このテーマの記事はまとめ:建設業の日報・勤怠・現場の情報に読む順番で並べています。


まず全体像を知りたい方も、議事録から試すときの進め方を個別に相談したい方も、相談する(フォーム・送信後に折り返し)をご利用ください。建設業のAI屋として何をして、何をしないかはこちらにまとめています。

AUTHOR

ケンセツベース(ARCFEELGROUP株式会社)

土木・建築・設備の建設グループ(110名・3業種)が、自社でのAIツール8本の内製を主導しました。 評論ではなく、当事者としての実装記録を書いています。

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