← ブログ一覧へ
読み物2026年7月17日

建設会社が使うAIは3種類——「ChatGPT・既製ツール・自社製」をどう使い分けるか

「AIを入れたいんだけど、結局どれを使えばいいの?」

経営者の集まりで、この質問を本当によく受けます。ChatGPTの話をする人もいれば、展示会で見た建設向けのAIツールの話をする人もいて、うちみたいに自社で作っている会社の話も聞く。全部「AI」と呼ばれているので、話が噛み合わないまま終わる。

私たちは建設業を2005年の創業から続けながら、土木・建築・設備の3業種・約110名の会社を経営しながら、この半年で8本のAIツールを自社向けに作ってきました。

その経験から言えるのは、世の中で「AI導入」と呼ばれているものは3種類あって、得意なこと・値段・失敗のしかたが全部ちがうということです。この3つを区別するだけで、道具選びの迷いはかなり消える気がしています。

3種類の正体

① 汎用AI(ChatGPT・Claude・Geminiなど)

なんでも相談できる、月数千円の「賢い相棒」です。文章を直す、議事録を要約する、就業規則の下書きを作る、専門用語を調べる。「その場かぎりの知的作業」が得意です。

逆に、毎日同じ形式で繰り返す業務(日報集計・請求書発行)を任せるには、毎回人が指示を打つ必要があり、続きません。

② 既製のAIツール(業務特化のSaaS)

日報アプリ、図面管理、工程管理など、「多くの会社に共通する業務」を月額で借りる道具です。導入が速く、サポートも付く。

弱点は、自社の独自ルール——うちの単価表、うちの帳票、うちの承認フロー——に合わせきれないことと、社員数×月額の費用が人数分ずっと続くことです。

③ 自社製AI(内製・オーダーメイド開発)

自社の業務の形そのままに作る道具です。私たちの8本はこれで、たとえば請求書は自社の帳票そのままに出ます。「自社にしかない型」をそのまま仕組みにできるのが強みです。

かわりに、作る手間と、直し続ける覚悟が要ります。完成した日がゴールではなく、運用の始まりです。

建設会社が使うAI3種類の正体の図解。①汎用AI(ChatGPT・Claude・Geminiなど)は「その場かぎりの知的作業」が得意で、毎日同じ形式で繰り返す業務は毎回人が指示を打つ必要があり続かない。②既製のAIツール(業務特化のSaaS)は導入が速くサポートも付くが、自社の独自ルールに合わせきれず社員数×月額の費用が続く。③自社製AI(内製)は「自社にしかない型」をそのまま仕組みにできるが、作る手間と直し続ける覚悟が要る。3種類は競合ではなく分担

選び方は2つの軸で決まる

どれを使うべきかは、業務を2つの軸に当てはめると、ほぼ機械的に決まります。

軸1: その業務は繰り返すか?(毎日・毎月発生するか、その場かぎりか)
軸2: その業務は自社独自か?(どこの会社でも同じか、うちの型があるか)

  • 繰り返さない × 独自でない → ①汎用AI。文章・調べ物・相談ごとは月数千円で十分です(経営で効く場面はChatGPTが効く5つの場面に書きました)
  • 繰り返す × 独自でない → ②既製ツール。勤怠や会計のように「どの会社もほぼ同じ」業務は、借りるのが一番安くて速い
  • 繰り返す × 独自 → ③自社製(または既製+カスタマイズ)。単価の決め方、帳票の形、現場との連絡の流れ。ここが会社の競争力そのものなら、道具を業務に合わせる価値があります
  • 繰り返さない × 独自 → まず①に自社の型を教えて凌ぐ。頻度が上がってきたら③に昇格させる

二つの軸で三種類を使い分ける図解。繰り返す×どこの会社でも同じなら②既製のAIツール、繰り返す×うちの型があるなら③自社製、その場かぎり×どこでも同じなら①汎用AI、その場かぎり×うちの型があるなら①で凌いで頻度が上がったら③へ。座標は動くので、毎週の定例になっていたら昇格の合図

失敗の多くは、この座標の取り違えで起きている気がします。その場かぎりの仕事に高い既製ツールを契約する。毎日の基幹業務をChatGPTの手作業で回そうとする。どの会社でも同じ業務をわざわざ内製する。道具が悪いのではなく、置き場所が合っていないだけ、ということが多いです。

もう一つ付け加えると、座標は動きます。最初はChatGPTでたまに作っていた書類が、いつの間にか毎週の定例業務になっていたら、①から③へ「昇格」させる合図です。うちの8本も、多くは「汎用AIで手作業していて、面倒になったから仕組みにした」という順番で生まれています。

逆に、使わなくなった既製ツールを惰性で契約し続けているなら「降格」の判断も要ります。年に一度、道具の棚卸しをおすすめします。

私たちの実際の使い分け

理屈だけでは伝わらないので、うちの現物を挙げます。

  • ①汎用AI: 経営の壁打ち、文書の下書き、契約書の論点洗い出し。社員も現場用語をAIに教えながら使っています(そのコツは「出面」をAIに教える方法に書きました)
  • ②既製ツール: 会計・給与・グループウェアなど「うちらしさが要らない」領域は既製で借りています。ここを内製する理由はありません
  • ③自社製: 日報・請求・経費・工程・積算など8本。どれも「うちの型が濃い」業務です。日報一つとっても、雨天時の扱い、半休の数え方、請求への流れ方は会社ごとにちがう。だからここは作りました

大事なのは、3種類は競合ではなく分担だということです。「ChatGPTか、ツールか、内製か」という三択の議論は、そもそも問いの立て方が違う気がしています。正しい問いは「この業務は、どの座標にあるか」です。

買う前のチェック3つ

3種類のどれを選ぶにしても、契約や着手の前に、この3つだけ確かめてみてください。

1. その業務の「現在のコスト」を数字で言えるか。月に何時間かかっていて、時給換算でいくらか。これが言えないと、道具の値段が高いか安いか判断できません(計算のやり方は電卓ひとつで確かめる方法に書きました)。

2. 毎日それを使う人の顔が浮かぶか。道具は導入した人ではなく、現場で毎日使う人が定着させます。使う人が「楽になる」と感じない道具は、放置されがちです(この構造は社員がAIを使わない本当の理由に書きました)。

3. やめられるか。既製ツールなら解約条件とデータの持ち出し。内製なら作った人がいなくなったときの引き継ぎ。入口より出口の設計が、あとで効きます。

契約や着手の前に確かめる三つの図解。①その業務のいまのコストを数字で言えるか ②毎日それを使う人の顔が浮かぶか ③やめられるか(既製ツールなら解約条件とデータの持ち出し、内製なら引き継ぎ)

よくあるご質問

Q. 小さい会社でも内製なんてできるのですか?
A. 一年前なら「難しい」と答えていました。いまは生成AIが開発そのものを手伝ってくれるので、ハードルは大きく下がっています。ただし順番があって、いきなり内製ではなく、①汎用AIで社内にAIに慣れた人を作ってから、が現実的だと思います。

Q. 3種類全部やる予算はありません。どれか1つなら?
A. ①汎用AIです。月数千円で全職種に効き、②や③を選ぶ目も養われます。1つの業務で構いません。何から始めるかの記事に書いたとおり、「紙の数字を一つ、データにする」からで十分です。

モルタル調の壁の部屋で、ベージュの作業着を着た二人が、それぞれノートパソコンを抱えて開き、一緒に画面を見ている写真

Q. 展示会で見たツールが良さそうでした。決め手は?
A. デモの見栄えではなく、さっきの2軸だと思います。その業務は繰り返しますか? 貴社独自のやり方が濃い業務ですか? 独自性が濃いのに既製ツールを入れると、「ツールに合わせて業務を変える」二重の苦労が始まります。

このテーマの記事はまとめ:建設会社のAI導入、何から始めて何でつまずくかに読む順番で並べています。


AIの道具選びは、車選びに似ています。軽トラとダンプとレンタカーのどれが正解かは、運ぶ荷物で決まる。

まず自社の業務を「繰り返すか・独自か」で仕分けてみる。道具のカタログを開くのは、その後で十分だと思っています。

AUTHOR

ケンセツベース(ARCFEELGROUP株式会社)

土木・建築・設備の建設グループ(110名・3業種)が、自社でのAIツール8本の内製を主導しました。 評論ではなく、当事者としての実装記録を書いています。

ケンセツベースについて

PUBLIC WORKS BIDDING

公共工事の入札情報を、毎朝。月5,000円から、入札係を一人。

名簿登録先の公告を毎営業日の朝に1巡し、出せる案件だけをLINEへ。月曜に週の一覧(PDF)。LINEでそのまま質問できます。無料1か月。全国の県・主要市の公告を毎朝1巡(対応は順次拡大中)。

続きは、実画面でどうぞ。

この記事に出てくる道具は、貴社の業務に合わせて作ってお渡しすることもできます(貴社専用につくる)。 無料のご相談を1社ずつ承っています。作ってほしい業務と、いまお使いの様式(Excel・帳票)を書いて送ってください。内容を拝見して、こちらから折り返します。建設業を営む会社さま限定・売り込みはしません。

すぐに使えるものをお探しなら 入札係を1か月無料で試す・貴社の様式に合わせたい方は 相談する