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2026年7月17日

「AIって、元が取れるの?」——「時間が浮く」と「お金が残る」を分けて確かめる方法

「社員50人が、毎日30分ラクになります」

展示会などでこう言われると、つい計算したくなります。

50人 × 30分 × 月20日 × 時給2,000円。

月100万円。

年間にすると1,200万円です。

かなり大きい。

ただ、この1,200万円が、そのまま会社に残るわけではありません。

社員の給料は、30分ラクになったからといって下がらないからです。

ここを曖昧にしたままAIを入れると、

「確かに少し便利になった。でも、元が取れたのかはよく分からない」

となります。

私たちは、土木・建築・設備の3業種で、約110名の建設会社です。

この1年で、AIを使った道具を8本、自社で作って使ってきました。

作れるものが増えるほど、気になるようになったのが、

何時間減るかではなく、その時間が何に変わるのか

ということでした。

「仕事の値段」と「会社に残るお金」は別です

たとえば、現場から届いた日報を、事務所でExcelに打ち直しているとします。

1日1時間。

月20日なら、月20時間です。

その仕事をしている人の時給を2,000円として計算すると、

20時間 × 2,000円 = 月4万円。

「日報の打ち直し」は、月4万円分の仕事だと分かります。

ここまでは、仕事の値段の話です。

ただ、この4万円は、道具を入れた瞬間に会社へ戻ってくるお金ではありません。

打ち直しがなくなっても、その人の給料は変わらないからです。

残業でやっていた1時間なら、残業代が減ります。

これは、会社に残るお金です。

定時の中でやっていた1時間なら、給料は同じで、時間だけが戻ってきます。

同じ「月20時間の削減」でも、中身はまったく違います。

なので、うちでは効果を2つに分けて見るようになりました。

効果を2つに分けて見ます

AIを入れる前には、効果をひとつの金額にまとめないほうが分かりやすいです。

見るのは、次の2つです。

会社から出ていくお金

  • 残業代がいくら減るか
  • 外注費がいくら減るか
  • 本当に予定していた採用や派遣を見送れるか
  • そこから道具代を引くと、月いくら残るか

計算するなら、こうなります。

月の現金効果 = 減る残業代 + 減る外注費 + 具体的に回避できる費用 − 月々の道具代

社内に戻ってくる時間

  • 誰に、月何時間戻るのか
  • 戻った時間を何に使うのか
  • 3カ月後、何が変わっていれば成功なのか

こちらは、無理にお金に換えません。

たとえば、

「月末の請求処理を2日早める」

「事務員を増やさずに、現場を2件多く支えられるようにする」

「社長に集まっていた確認を、週5時間減らす」

というように、仕事の変化として見ます。

時間とお金を分けるだけで、かなり判断しやすくなります。

月額料金だけを見ても、道具の値段は分かりません

AIの道具にかかる費用は、月々の利用料だけではありません。

最初の設定があります。

これまでのデータを移す時間もあります。

使う人に説明して、慣れるまで付き合う時間も必要です。

書式や社内ルールが変われば、直す作業も出ます。

自社で作った道具なら月額料金は安く見えますが、直す人の時間はかかります。

月額0円だから、無料とは限りません。

作ったときは動いていても、実務に入れると想定外が出ます。

現場ごとに入力の仕方が違う。

紙で届く日もあれば、LINEで届く日もある。

便利にしたつもりが、現場側の入力を増やしてしまうこともあります。

道具の費用を見るときは、

  • 最初に入れる手間
  • 使う人に教える時間
  • 導入後に直す時間
  • やめるときにデータを取り出せるか

このあたりも、ひと山として見ておいたほうがよさそうです。

社員に配っただけでは使われなくなる理由については、社員がAIを使わない本当の理由にも書きました。

良い話は、最初の計算から外します

AIを入れると、数字にしにくい良いこともあります。

入力間違いが減る。

データが残る。

担当者が休んでも、別の人が仕事を追いやすくなる。

採用のときに、会社の印象が少し変わる。

どれも大事です。

ただ、実績がない段階で全部を金額にすると、ほとんどの道具が「入れたほうが得」という答えになります。

AIの営業資料は、足し算がうまいです。

社内で判断するときは、少し引き算で見たほうがいい。

まずは、残業代や外注費など、実際に減るものだけで計算する。

それでも合うなら入れる。

間違いの削減などは、導入後に実績が出てから足せば十分です。

まず1週間だけ測ってみる

いちばん難しいのは、計算ではありません。

「その仕事に、今どれくらい時間がかかっているか」が分からないことです。

これは珍しいことではありません。

毎日やっている仕事ほど、時間を測っていないからです。

まずは1週間だけ、

  • 何時に始めたか
  • 何時に終わったか
  • 通常勤務か、残業か
  • 外注している部分があるか

をメモします。

1週間分を4倍すれば、月の目安が見えてきます。

そのうえで、半分になった場合を計算する。

全部なくなる前提にはしません。

最後の確認は残ります。

慣れるまでの時間も必要です。

実際の業務では、半分になれば十分という仕事も多いです。

何から測ればよいか迷う場合は、建設業のDXは何から始めるかにもまとめています。

「元が取れない」も、ちゃんとした答えです

計算してみたら、思ったほど効果が出ないこともあります。

その場合は、入れない。

それでいいと思います。

AIを入れること自体が目的ではありません。

月5時間しかかかっていない仕事に、高い道具を入れても合いません。

売り込みを受けたときにも、

「うちでは月にこれくらいしか時間を使っていないので、この金額では合いません」

と言えます。

感覚ではなく、社内の数字で断れます。

これも、時間を測る意味のひとつです。

よくあるご質問

Q. 何ヶ月で元が取れれば合格ですか?

A. 会社から出ていくお金のほうの計算で、1年以内なら十分だと思います。

2年を超えるようなら、道具が悪いというより、選んだ仕事が合っていないのかもしれません。

もっと時間がかかっている別の仕事で、計算し直してみてください。

Q. うちは残業も外注もほとんどなく、現金効果が出ません。入れないほうがいいですか?

A. 急がなくていい、が正直なところです。

ただ、戻ってくる時間の使い道がはっきり言えるなら、入れる価値はあります。

「請求処理を2日早める」「現場をもう1件見られるようにする」。

ここまで言えてから入れると、あとで「便利になった気がするだけ」になりません。

Q. この計算、誰がやるべきですか?

A. 最初の1回は、社長ご自身でやってみるのがおすすめです。

一度やると、社内の仕事が「月いくら」と「誰の時間」で見えるようになります。

AIだけの話ではなく、外注の値段を見るときも、人を雇うか決めるときも、この見方はずっと使えます。


AIで元が取れるかを見るとき、

月何時間かかっているか

だけでは足りません。

その時間が、

残業なのか。

外注なのか。

通常の勤務時間なのか。

そして、浮いた時間を何に使うのか。

ここまで決めて、ようやく会社の判断になります。

まずは、気になっている仕事をひとつだけ選ぶ。

来週1週間、かかった時間を測る。

その時間を「お金」と「戻ってくる時間」に分けてみる。

電卓を叩くのは、そのあとです。

AIの費用対効果は、何時間減るかだけではなく、減った時間を何に変えるかで決まります。

AUTHOR

ARCFEELGROUP株式会社

ARCFEELGROUP株式会社。土木・建築・設備の建設グループ(110名・3業種)で、 建設業のIT/DXとAI活用ツールの内製を担っています。評論ではなく、当事者としての実装記録を書いています。

ARCFEEL × AI について

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