建設業の人手不足はなぜ解消しないのか——AIを社内で回して見えた「本当の原因」
「人が足りない」と言い続けて、何年経ったでしょうか。
正直に書くと、私たちも同じでした。求人を出し、単価を上げ、それでも足りない。ところが社内でAIの道具を八本ほど作って回してみて、足りていなかったのは人の頭数ではなく、人の時間の使い方だったと気づきました。
私たちは土木・建築・設備をやる建設会社です。2026年1月から約半年、社内で使う道具を自分たちで作りながら動かしてきました。その範囲で見えたことを書きます。

足りないのは「人」ではなく「割ける時間」でした
人手不足の話をするとき、たいてい採用の話になります。でも、私たちが最初に測ったのは採用ではなく、いまいる人が何に時間を使っているかでした。
すると、こういうものが出てきます。
- 領収書を工事コードに振り分ける
- 議事録を書き起こして清書する
- 同じ数字を別の表に打ち直す
- 「あの書類どこ」を探す
どれも、技術者にしかできない仕事ではありません。 それなのに、技術者の時間がここに吸われていました。
人が足りないのではなく、人にしか頼めない仕事に、人が回せていないわけです。
なぜ採用を増やしても解消しないのか
理由はシンプルでした。
増やした人も、同じ雑務に吸われるからです。
一人採ると、一人分の書き起こしと打ち直しと探し物が増えます。器を大きくしても、水が漏れる穴がそのままなら、水位は上がりません。(採用だけでは人手不足は解消しないで、就業者数と年齢構成の側からも書きました)
| いまの形 | 何が起きているか |
|---|---|
| 足りない→採用する | 採った人も雑務に吸われる |
| 単価を上げる | 雑務の量は減らない |
| 残業で埋める | 続かない・辞める |
私たちは、先に穴の方を塞ぐことにしました。順番の問題だと思っています(建設業の2024年問題と残業3種類でも、残業を分けて消す順番の話を書いています)。
「割れる仕事」から先に抜く
やったのは難しいことではありません。現場でやっている割り方を、そのまま事務所に持ち込んだだけです。
その仕事、もう一段細かく割れませんか。
議事録なら「書き起こす/まとめる/決める」に割れます。このうち書き起こしは機械に頼めます。決めるところは人が見る。こう割ると、人にしか頼めない部分だけが人の手元に残ります。
効いたのは、一つの面倒を消す小さい道具でした。数日で形になるものもあります。壮大な仕組みより、地味に面倒な仕事を一つずつ抜く方が、現場は軽くなりました。
数字で言えること、言えないこと
効果を大きな数字で言えるほどは、まだ溜まっていません。ここは正直に申し上げておきます。
ただ、確かに変わったのは、技術者が図面や現場に戻れる時間が増えたことです。打ち直しに使っていた時間が、本来の仕事に戻りました。
「人が増えた」わけではありません。一人あたりが、人にしか頼めない仕事に使える時間が増えた。人手不足の実感は、ここでずいぶん変わる気がしています。
よくある質問
Q. 小さい会社でも意味がありますか?
小さい会社の方が、一人が何役もやっています。その分、雑務に吸われている時間も見えやすいです。まず一人の一日を一枚に書き出してみてください。割れる仕事が、思ったより多いはずです。
Q. 現場が覚えてくれるか不安です。
現場に新しい手順を一つでも頼む設計だと、そこが止まる場所になります。だから私たちは、現場の手間が増えない側から入れました。覚えることを増やさない、が入り口だと感じています。
人手不足は、頭数だけの問題ではないのかもしれません。
足りないのは人ではなく、人にしか頼めない仕事に割ける時間だった。 そこを疑ってみると、明日できる一手が一つ見えてくるのではないでしょうか。
このテーマの記事はまとめ:建設会社のAI導入、何から始めて何でつまずくかに読む順番で並べています。
いまいる人の時間をどこから取り返すか、自社の場合はどうか、個別に相談したい方は相談する(フォーム・送信後に折り返し)をご利用ください。建設業のAI屋として何をして、何をしないかはこちらにまとめています。
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ケンセツベース(ARCFEELGROUP株式会社)
土木・建築・設備の建設グループ(110名・3業種)が、自社でのAIツール8本の内製を主導しました。 評論ではなく、当事者としての実装記録を書いています。
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