「どうやって勉強したんですか」——全部AIに聞きました。ただ、遠回りも全部歩きました
「どうやって勉強したんですか?」
AI導入の説明会をやることになり、その資料を作っていて、この質問への答えを一枚にまとめる場面がありました。書き出してみたら、答えは一行で終わってしまったんです。
全部、AIに聞きました。
本もスクールも、コンサルもなしです。教材代だけを見ればゼロでした。ただ、タダで済んだとは思っていません。お金の代わりに、遠回りを半年ぶん歩きました。
私たちは土木・建築・設備をやっている約110名の建設会社で、2026年の1月から約半年で、社内で使うAIツールを8本作って動かしてきました。作って運用して見えた現実は半年でわかったことの記事に書きましたが、あれは「やった結果」の話でした。今回はその手前、そもそもどうやって覚えたのかという話です。
本を買わなかったのは、方針ではありませんでした
先に答えを言ってしまうと、教材を使わなかったのは決意でも節約でもなく、聞けばその場で返ってくる相手が目の前にいたので、調べる前に聞いてしまい、それで足りてしまったからです。
書店に行けばAIの本は並んでいますし、講座やセミナーも探せばいくらでも見つかります。それらが駄目だという話ではありません。順番の問題で、うちの場合は「教わってから作る」ではなく、作りながら、詰まるたびに聞く形に最初からなっていました。
たとえば、作っている途中でエラーが出ます。以前の私たちなら、エラーの意味を検索して、それらしい解説を探して、自分の場合に当てはめ直して——という順番でした。いまは、エラーの文面をそのまま貼って「これはどういう意味ですか」と聞きます。返ってきた説明が分からなければ、「もっと簡単に言ってください」と重ねて聞く。人間の先生と違って、何度聞き直しても嫌な顔をされないんですよね。
勉強の時間を別に取ったわけでもありません。日中の詰まりがそのまま教材で、夜に机へ向かい直すこともほとんどなかったので、勉強と仕事の境目がなかった、と言った方が実感に近い気がします。
面白かったのは、教わる一方ではなかったことです。出面や常傭といった建設の言葉は、そのままではAIに通じません。だから、こちらが先に用語を教える場面もずいぶんありました(用語を教えた話はこちら)。勉強というと一方向に教わるものだと思っていましたが、実際は行ったり来たりでした。
聞けば何でも答えてくれるのに、なぜ半年も遠回りしたのか
これだけ聞ける相手がいて、なぜ遠回りしたのか。振り返ると、答えが返ってこなかったからではなく、聞くべき質問をこちらが持っていなかったからでした。
守りを固めたら、社員がログインできなくなったことがあります(締め出しの話)。あのときAIに聞いていたのは「どう守るか」だけでした。「守りを強くしたとき、中の人が困る場面はないか」とは聞いていません。聞いていれば、たぶん答えは返ってきたはずなんです。質問が、こちらに存在しなかっただけで。
勤怠の集計に、実害につながるバグを3件見つけて直したこともありました(顛末はこちら)。「夜勤の集計はこれで合っていますか」と聞くためには、その前に、夜勤の集計が怪しいと疑えている必要があります。疑いは、使ってみるまで生まれませんでした。
古い数字を一括で直したのに、直っていない場所が残っていたこともあります(このときの話)。あの日に足りなかったのは直し方の知識ではなく、「このやり方で見落とす場所はどこですか」という一言でした。
知識はいくらでも引き出せるのに、「何が分からないか」だけは、こちらの側にしか生まれない。 半年の遠回りの正体は、たぶんこれです。失敗と作り直しの連続でしたが、どの失敗も、あとから見れば「聞き忘れた質問」の形をしていました。
それでも、この覚え方で良かったと思っていること
正直に書くと、良かったと思っています。理由は、出てきた順に覚えるので、覚えたことがその日の仕事にそのまま使えたからです。
教材で先回りして体系的に学ぼうとすると、うちの業務に出てくる順番では書かれていません。目の前の勤怠アプリで詰まっているときに必要なのは、第3章ではなく、いま画面に出ているエラーの意味です。詰まるたびに聞く形は、遠回りに見えて、覚えたことに無駄がありませんでした。
逆に、使わなかった知識はほとんど残っていません。それでいいと思っています。必要になったら、また聞けばいいだけですから。覚えておく場所が、頭の中から「聞けば出てくるところ」へ移った、という感覚です。
ここまで読んで「それなら自分たちでもできそうだ」と思われた方。そのとおりだと思います。私たちにできたことは、皆さまにもできます。 特別な経歴の人間はいませんでしたし、教材にお金もかけていません。
そのうえで付け加えるなら、うちは失敗と作り直しで約半年を使いました。教材代がゼロというのは、遠回りを自分の足で歩くことまで含めての「ゼロ」です。時間を買いたい会社と、自分の足で歩きたい会社。どちらが正しいという話ではなく、払うものがお金か時間かの違いなんだと思います。

これから始める方に、そのまま渡せること
もし「まず何で勉強すればいいか」で止まっているなら、教材選びは飛ばしてしまって大丈夫です。代わりに、いま実際に困っている仕事をひとつ持って、AIに聞くところから始めることをお勧めします。
質問の上手い下手は気にしなくて構いません。伝わらなければ聞き返されますし、何度でもやり直せます。相手が人だと「こんな初歩的なことを」とためらう場面でも、AIにはためらう理由がありません。この気楽さは、勉強の道具として思っていた以上に効きました。
先に押さえておくと安全なことは二つだけです。ひとつは、会社の資料を入れる段になったら、入力が学習に使われない契約の形を先に決めること(社内ルールの話)。もうひとつは、最初の題材を「間違っても誰も困らない仕事」から選ぶことです(選び方は五つの物差しに書きました)。
それから、遠回りを短くする方法をひとつだけ知っています。先に歩いた人の失敗談を読むことです。失敗談には、自分がまだ持っていない質問が、答えつきで並んでいます。このブログで私たちが失敗をそのまま書き続けているのも、勉強していたころの自分たちが、いちばん読みたかったものだからです。
このテーマの記事はまとめ:建設会社のAI導入、何から始めて何でつまずくかに読む順番で並べています。
まず全体像を知りたい方は建設会社のAI導入 30分説明会へ。自社の場合はどこから始められそうか、個別に相談したい方は無料相談をご利用ください。AI顧問が何をする仕事かはこちらにまとめています。
AUTHOR
﨑元 理安(ARCFEELGROUP株式会社 代表取締役)
土木・建築・設備の建設グループ(110名・3業種)の社長として、自社でのAIツール8本の内製を主導。 評論ではなく、当事者としての実装記録を書いています。
ARCFEEL × AI について