← ブログ一覧へ
実務Q&A2026年8月11日

社内にAIを入れるとき、どの仕事から任せる?——うちが使っている五つの物差し

この記事は「実務Q&A」です。調べ物のための記事です。結論を先に書いています。読み物としての記事は、ブログ一覧の「読み物」からどうぞ。

「AIって、まず何をやらせればいいんですか」

説明会でも、同業の集まりでも、いちばんよく受ける質問です。答えを先に書いてしまうと、うちには選ぶときの物差しがあります。

毎日のように発生して、少し面倒で、人によってやり方がバラついていて、あとからまとめると重くなり、そして現場の本丸ではない仕事。 ここから任せるのが、いちばんつまずきません。

私たちは土木・建築・設備の3業種、約110名の建設会社です。2026年の年明けから約半年で、社内で使うAIツールを8本作って動かしてきました。内製の疑問Q&Aでは「最初に作るものの条件は三つ」と約めて書きましたが、あれは自分たちで作る場合の話でした。実際に社内で「次はどの仕事をAIに任せるか」を決めるときは、作る・作らないの前に、もう少し細かく五つを見ています。今回はその五つを、うちの実例と一緒に書きます。

任せる仕事を選ぶ五つの物差しの図解。①毎日か毎月かならず来るか ②外注するほどではないが地味に面倒か ③人によってやり方がバラついているか ④あとからまとめると急に重くなるか ⑤現場の本丸から遠いか。四つ以上に印が付いた仕事が最初の一本

物差し① 毎日か毎月、かならず来る仕事か

一つめは頻度です。年に数回しか起きない仕事をAIに任せても、浮く時間は年に数回分しかありません。逆に、毎日来る仕事なら、一回あたりの効果が小さくても掛け算で効いてきます。

うちの経費精算が、まさにこの形でした。月末にかならず来て、全員が関わる。一枚一枚は数分の作業でも、束になると午後が消えるんですよね。

もう一つ、頻度の高い仕事には見えにくい利点があります。毎日使うものは、直す機会も毎日あることです。うちの半年でいちばん多かった作業は、作ることではなく直すことでした。たまにしか動かない仕組みは、不具合に気づくのも直すのも遅れます。

物差し② 外注するほどではないが、地味に面倒か

二つめは重さの加減です。

大きな構想から入らない、というのはうちが半年通して守ってきたことです。実際に困っている、だから減らすために手を付ける、動いたら直す、また使う。この順番で回してきました。「会社を変える」から入ると、仕組みを作る話より調整する話の方が大きくなります(このあたりはDXという言葉の記事に書きました)。

「外注するほどではない」というのが、実は良い目印なんです。外注するほど大きい仕事は、要件も関係者も多い。外注するまでもなく我慢している仕事は、要件が小さくて、困っている人がはっきりしている。AIに任せる最初の仕事として、ちょうどいい大きさです。

物差し③ 人によって、やり方がバラついているか

三つめは、バラつきです。

同じ日報でも、書く人によって言葉も粒度も違う。同じ集計でも、担当者ごとにエクセルの触り方が違う。こういう仕事は、人が頑張って揃えようとすると角が立ちます。「あの人のやり方を直してください」とは、なかなか言えません。

AIを間に挟むと、ここが揉めずに揃います。うちの日報は、現場には今までどおり書いてもらって、揃える作業のほうをAIに任せる形にしました。書く側に「この形式で書いてください」と迫らずに済んだのが、続いている理由だと思っています(日報の出口を三つに分けた話)。

バラついている仕事は、裏を返せば「決まった正解の形がまだ無い」仕事です。人の癖を直すより、受け取る側で吸収する。AIはこの使い方が得意です。

人の癖を直さずに受け取る側で揃える図解。書く人に「この形式で書いてください」「あの人のやり方を直してください」と迫るのは角が立って続かない。現場は今までどおり書いてもらい、揃える作業のほうをAIに任せると揉めずに揃う

物差し④ あとからまとめると、急に重くなるか

四つめは、時間差です。

一件ずつは軽いのに、月末にまとめて処理すると急に重くなる仕事があります。経費の束、勤怠の突き合わせ、日報の集計。日々のうちは誰も困っていないのに、締めの数日だけ誰かが残業する。建設会社の事務の残業は、だいたいこの形をしています。

この型の仕事は、発生したその場でAIに処理させて、月末には確認だけが残る形に変えられます。うちの経費精算はスタッフが領収書をスキャンするだけで、読み取りと仕分けはその場で終わります。月末に積み上がらないので、締めの残業が構造から消えました。

「あとでまとめてやる」が前提になっている仕事を見つけたら、それはAIの候補です。

月末に山になる仕事の形を変える図解。いままでは日々誰も困っていないのに月末に山になり締めの数日だけ残業する。変えたあとは発生したその場でAIが処理し、月末に残るのは確認だけ。月末に積み上がらないので締めの残業が構造から消える

物差し⑤ 現場の本丸から、遠いか

五つめは、外した場合の重さです。

最初の仕事は、間違えても取り返しがつく場所から選びます。経費の読み取りが一枚間違っても、経理が気づいて直せば済みます。ところが見積の数量や原価の計算そのものから入ると、合っているかを確かめる作業が全部に付いて回ります。確かめるくらいなら自分でやる、となって、使われなくなるんです。

工事の品質や安全に直結する判断も、最初の一本には向きません。AIが向くのは判断の手前——数える、読み取る、揃える、下書きする——までで、決めるのは人のままです。本丸は、周辺で実績と勘所ができてからで遅くありません。

ひとつ、紛らわしい書き方をしているので断っておきます。DXは何から始めるかでは「毎日発生していて、間違うと痛い数字から選ぶ」と書きました。日報や勤怠のように、そこが狂うと下流の集計が全部狂う数字のことです。一見この⑤と逆に見えますが、指しているものが違います。あちらは直す値打ちがどこにあるかの話、この⑤はAIに任せて外したときに戻せるかの話です。日報や勤怠は、会社にとっては重いけれど、AIが読み違えても人が気づいて直せる。だから両方に当てはまります。

逆に、五つに当てはまっても外している仕事

正直に書いておくと、物差しに合っていても、うちが最初の候補から外しているものがあります。

金額や納期を、外に向かって確定させる仕事です。見積書の金額、請求書、工期の回答。ここはAIが下書きまで作っても、出す前にかならず人が通る形にしています。間違いが会社の約束になってしまう場所だからです。

社外に出るものと、社内で完結するもの。同じ「書類仕事」でも、この線は分けて考えています。

社外に出る仕事と社内で完結する仕事を分けた図解。金額や納期を外に向かって確定させる仕事(見積書の金額・請求書・工期の回答)はAIが下書きを作っても出す前に必ず人が通る。社内で完結する仕事は数える・読み取る・揃える・下書きするまでで、外しても気づいて直せば済む

実務Q&A

Q. 五つ全部に当てはまらないと、だめですか?

A. 全部でなくて構いません。ただ、当てはまる数が多いほど、つまずきにくくなります。最低限見ていただきたいのは①(かならず来るか)です。頻度のない仕事は、うまくいっても効果が積み上がりません。

Q. 自社でツールを作る予定はなく、ChatGPTを使うだけです。それでも同じ選び方ですか?

A. 同じです。この五つは「作る仕事」ではなく「任せる仕事」の物差しなので、ChatGPTに文面の下書きを頼むだけでも当てはまります。道具の種類ごとの向き不向きは3種類の使い分けの記事に分けて書きました。

Q. この物差しで選ぶと、小さい仕事ばかりになりませんか。効果が出るのか不安です。

A. 小さくなります。ただ、建設会社は現場・事務・経理・原価・経営が一本につながっているので、一つの小さい改善が思った以上に全体へ効きます。日報が揃うと勤怠と原価の集計が変わり、集計が早いと経営の数字が早くなる。入り口は小さくても、流れの上流を直すと下流がまとめて楽になるんです。うちで実感してきたのは、むしろこちらでした。

Q. 何から始めるかは、誰が決めるのがいいですか?

A. 決める場に、社長が一度は入ることをおすすめします。担当者だけに任せると、その人の周りの仕事だけが便利になって終わりやすいからです。五つの物差しで候補を並べる作業自体は、30分もあれば済みます。

事務所の机で、作業着の男女がヘルメットを手元に置いて、広げたカタログを一緒に見ながら話している写真

まとめ——紙に書き出して、印を付けるだけです

社内のよくある仕事を10個ほど書き出して、五つの物差しに当ててみてください。

  • 毎日か毎月、かならず来るか
  • 外注するほどではないが、地味に面倒か
  • 人によってやり方がバラついているか
  • あとからまとめると重くなるか
  • 現場の本丸から遠いか

四つ以上に印が付いた仕事が、御社の最初の一本です。派手な仕事はたぶん残りません。それでいいんです。私たちの8本も、最初は「地味に面倒」を一つ潰しただけのところから始まっています。

このテーマの記事はまとめ:建設会社のAI導入、何から始めて何でつまずくかに読む順番で並べています。


まず全体像を知りたい方は建設会社のAI導入 30分説明会へ。自社の場合どの仕事からになりそうか、個別に相談したい方は無料相談をご利用ください。AI顧問が何をする仕事かはこちらにまとめています。

AUTHOR

﨑元 理安(ARCFEELGROUP株式会社 代表取締役)

土木・建築・設備の建設グループ(110名・3業種)の社長として、自社でのAIツール8本の内製を主導。 評論ではなく、当事者としての実装記録を書いています。

ARCFEEL × AI について

続きは、実画面でどうぞ。

AIで会社がどう変わったか、私たち自身の実画面を30分でお見せする無料説明会を月2回開催しています(Zoom・顔出し不要・建設業を営む会社さま限定)。 相談まではまだ、という方には3分の経営課題チェックも(登録不要・無料)。

次回の説明会: 2026年9月8日(火)16:00〜16:30 / 2026年9月30日(水)16:00〜16:30

まず資料だけ、という方へ ── 「12ヶ月標準カリキュラム」(PDF・23ページ)

1年で受け取る物・進め方・費用・セキュリティ・事例まで一冊にまとめた資料です。会社名とメールアドレスだけで、すぐお送りします。

ご入力の情報は本資料の送付と、説明会・相談のご案内以外には使いません(プライバシーポリシー)。

新着記事のお知らせはメルマガ(不定期)でも受け取れます。