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読み物2026年8月4日

建設業の日報、何を書いてもらう?——書式を直す前に、出口を三つに分けました

「日報の書式、作り直しましょうか」

社内でそう言いかけて、やめました。書式を直しても、たぶん同じところで止まると思ったからです。

日報が埋まらない理由は、たいてい書式の側にありません。

私たちは土木・建築・設備の三業種をやっている建設会社で、約110名。この半年ほど、社内で使う道具を自分たちで作りながら回しています。日報も、そのうちの一つです。以前領収書の行き先について書いたときは「読めても、どの現場のものかは決まらない」という話でしたが、今回は受け取る前の話——そもそも何を書いてもらうかの方です。

日報は、三つの別々の問いに答えさせられています

一枚の日報に何を書くか。ここで迷うのは、日報が一つの目的で作られていないからでしょう。

分けてみると、だいたい三つあります。

  1. その日、何があったかを伝える——誰がどの現場に入り、何をして、何が起きたか
  2. 工事ごとの人工を出す——原価に乗せるために、現場別・人別の時間を集める
  3. 後から出せる記録として残す——出勤の記録や労働時間として、必要なときに示せるようにしておく

厄介なのは、この三つで欲しい粒度が違うことです。①は文章で足りますが、②は数字でないと集計できない。③はさらに、後から書き換えていないことまで求められます。

一枚の紙で三つ全部をやろうとすると、欄が増えます。欄が増えると、現場は書かなくなる。それで書式をまた直す——という往復に入りがちです。

ヘルメットと作業着姿の男性が、ビル現場でタブレットを手に指をさしている

うちは、入口を一本にして出口で分けました

三つに分けたのは、書かせる側ではなく受け取る側でした。

現場の人が送るのは一つだけです。LINEに、話し言葉で送る。「出勤」でも「7時半から渋谷の現場」でも通ります。写真でも、音声でも構いません。文字入力が苦手な方が実際にいるので、ここは最初から諦めました。

受け取った側で、それが打刻なのか、日報なのか、経費なのかを機械が読み分けます。読み分けたあと、①は本文として残り、②は現場別・人別の集計に入り、③は記録として保存される。入口は一本、出口は三つという形です。

書式を直す発想だと、この分け方は出てきません。書式は入口をいじる作業ですから。

表記のゆれは、直させないことにしました

これは決めるまでに少し議論がありました。

「7時半」「7:30」「朝7時半から」。同じことを言っているのに、集計の段では別物になります。普通は書き方を統一してもらうところです。

ただ、統一をお願いすると、守る人と守らない人が出ます。守らない人を追いかける仕事が、事務所に増える。それなら受け側で揃えた方が早い、という判断にしました。現場名も同じで、「渋谷現場」でも「渋谷マンション」でも、こちらの現場の一覧に寄せて読みます。

建設の言葉づかいでAIがつまずく話は以前も書きましたが、ゆれを消すより、ゆれたまま受ける方が現実的でした。

日報の入口と出口を示した図解——現場が送るのは話し言葉のひとつだけ、受け取った側で読み分けて、本文・現場別の集計・記録の三つに分かれる

エクセルで足りる会社と、足りなくなる会社

正直なところ、人数が少なくて現場も少ないうちは、エクセルで十分回ります。道具を入れる話ではありません。

苦しくなるのは、次のどれかが起きたときでした。

  • 転記が毎日発生している——紙で受けて、事務所で打ち直している時間が積み上がっているとき
  • 月末にならないと工事別の人工が見えない——途中で採算の見当が付かないとき
  • まとめる人が一人しかいない——その人が休むと止まるとき

三つ目が、いちばん静かに効いてきます。回っているように見えるので、誰も困っていないように見えるんです。

逆に言えば、この三つが起きていないなら、急いで変える必要はないと思います。

窓辺でノートパソコンを手に、街を見ている経営者の後ろ姿

「義務」と「保管期間」について

検索していると、日報の義務や保管期間を調べている方が多いようです。

ここは正直にお伝えします。何をどれだけ残すかは、書類の種類と会社の状況で変わるので、この記事で一律にはお答えできません。 労働時間の記録なのか、工事の記録なのか、経理の書類なのかでも別の話になります。

うちがやっているのは、残す設定を先に決めて、それを動かさないことでした。修正の履歴が自動で残るようにして、保存期間も決めて設定しています。それが御社に必要な形と同じかどうかは、顧問の社労士さんや税理士さんに確かめてください。私たちは、その判断をする立場ではありません。

道具を選ぶときに一つだけ見ておくとすれば、**「後から直した記録が残るか」**です。ここが残らない仕組みだと、記録としての値打ちが下がります。

エクセルで足りなくなるサイン三つの図解——転記が毎日発生している、月末にならないと工事別の人工が見えない、まとめる人が一人しかいない

現場に嫌がられなかった理由

導入して分かったのは、現場が嫌がるのは入力そのものではないということでした。

嫌がられるのは、こういうところです。

  • アプリを新しく入れる——電話の中に、また一つ増える
  • 覚える操作がある——押す場所を間違えると怒られる気がする
  • 送ったあと、合っているか分からない——不安なまま一日が終わる

だから、すでに全員が使っているLINEの中で完結する形にしました。送ると返事が返り、月末には自分の出勤日数が並んで出てきます。自分の分が自分で見えるようになってから、送り忘れの催促がずいぶん減りました。

鉄骨の建方が進む現場と、青空に伸びるクレーンのブーム

いただくことの多い質問

Q. 現場の電波が悪いところがあります。

その場で送れないことは前提にしました。あとから「出勤7時」のように時刻を指定して送れる形にしています。厳密なタイムレコーダーとしては使えませんが、建設の現場では後から直せる方が実際的でした。

Q. 手書きの日報をやめると、年配の方が困りませんか。

うちでは音声で送れるようにしたので、そこは大きな問題になりませんでした。話すのは、書くより早いです。

Q. 何から始めるといいですか。

書式を作り直す前に、今の日報が三つのうちどれのために書かれているかを確かめるところからだと思います。②の集計が目的なのに文章欄が大きい、といったズレが見つかることがあります。

書式より、出口から決める

日報の話になると、どうしても「何を書かせるか」から始まります。私たちもそこから始めて、二度ほど書式を作り直しました。

三つ目でようやく、出口が決まっていないから入口が決まらないのだと気づいた、というのが本当のところです。

集計に使うのか、記録として残すのか、その日の様子を伝えるのか。先にそこを決めると、書いてもらうことは思ったより少なくて済むんじゃないでしょうか。

このテーマの記事はまとめ:建設業の日報・勤怠・現場の情報に読む順番で並べています。


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AUTHOR

﨑元 理安(ARCFEELGROUP株式会社 代表取締役)

土木・建築・設備の建設グループ(110名・3業種)の社長として、自社でのAIツール8本の内製を主導。 評論ではなく、当事者としての実装記録を書いています。

ARCFEEL × AI について

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