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実務Q&A2026年8月2日

建設会社がAIツールを社内で作るときの疑問——プログラミング・人・費用・失敗

この記事は「実務Q&A」です。調べ物のための記事です。結論を先に書いています。読み物としての記事は、ブログ一覧の「読み物」からどうぞ。

「AIツールを社内で作る」と言うと、たいてい同じところを聞かれます。プログラミングは要るのか、誰がやるのか、壊れたらどうするのか。

建設会社で半年ほど、社内で使う道具を8本ほど作って動かしてきました。その範囲で答えられることを、聞かれた形のまま並べます。うまくいっていない部分も書きます。

Q. プログラミングができないと無理ですか?

書けないと無理、ということはありませんでした。

ただ、「何を作るか」を自分で決められないと進みません。 手を動かす部分は道具が肩代わりしてくれますが、どの業務のどこを軽くするのか、どこは人が見るのかを決めるのは、こちら側の仕事です。

建設でいえば、図面を引く技術より、何をどう納めるかを決める側に近いところです。

Q. 誰がやるんですか。専任が要りますか?

うちは専任を置いていません。

置かなかったのは、**専任にすると「その人が忙しいときに止まる」**からです。ただし、これは道具が小さいから成り立っている話でもあります。大きいものを作ろうとすれば、話は変わります。

社長が一度は触っておくことをお勧めします。何が頼めて、どこでズレるかの感覚は、聞いた話では身に付きませんでした。

Q. どのくらいの期間でできますか?

作るものによります。一つの面倒を消すだけなら、数日で形になるものもあります。

期間よりも、次のことの方が実感に近いです。作る時間より、作ったあとに見続ける時間の方が長い。 ここを見ないで期間だけ考えると、あとで足りなくなります(運用の話はこちら)。

Q. 外注するのと、どちらが安いですか?

初回だけを比べれば、外注が高いとは限りません。差が出るのはそのあとです。

外注でいちばん重かったのは、金額よりも**「直したいときに待つ」**ことでした。使ってみて「そこじゃなかった」と分かるのが、たいてい一週間後です。そこから説明して、見積もりをもらって、また待つ。その往復のあいだ、現場は元のやり方に戻ります。

外注と内製の差を並べた図解。外に頼むと「そこじゃなかった」と分かるのはたいてい一週間後で、説明して見積もりをもらって待つ往復のあいだ、現場は元のやり方に戻る。内側でやると、分かったその日のうちに直せて、現場が元に戻る前に次を出せる。差が出るのは金額ではなく、直したいときに待たないこと

外注が悪いという話ではありません。建設と同じで、外に頼むべきものと、自分でやった方が早いものが分かれるだけです。うちの場合、「外注するほどではないけれど地味に面倒」という仕事が社内に大量にあって、そこは内側でやる方が合っていました。

Q. 作ったあと、動かなくなったらどうしますか?

止まります。実際に何度か止まりました。

大事なのは、止まったことに気づける形にしておくことです。うちは毎朝、全部の道具が動いているかを機械が見にいって、おかしければ知らせが来るようにしています。知らせの宛先を一人にしない、というのも後から直した点です(この話はこちら)。

「壊れないものを作る」より、「壊れたら分かる」の方が現実的でした。

Q. セキュリティは大丈夫ですか?

自分たちで作る以上、ここは自分たちの責任になります。

うちは実際に穴を見つけて塞いだことがありますし(鍵の穴の話)、逆に守りを固めすぎて社員が入れなくなったこともあります(締め出しの話)。外から入られる方だけを見ていると、中の人が入れなくなる方を見落とします。

「作れる」と「預かれる」は別の仕事だと思っています。社内の道具から始めて、外の人のデータを扱うのは、そのあとの話です。

壊れたら分かる形にするという図解。止まらないものは作れず実際に何度か止まったので、毎朝すべての道具が動いているかを機械が見にいき、おかしければ知らせが来る形にした。知らせの宛先を一人にしないのは後から直した点。セキュリティは外から入られる方だけでなく、守りを固めすぎて中の人が入れなくなる方も見る

現場事務所の写真。壁に安全計画のボードと消火器、机にヘルメットと工具が置かれ、作業着の男性と青い作業着に黄色いベストを重ねた年配の男性が向かい合って考えている

Q. 何人くらいの会社から意味がありますか?

人数より、同じ作業が何回起きるかの方でした。

月に何十回も起きる転記や確認があるなら、人数が少なくても効きます。逆に、人数が多くても毎回やり方が違う仕事は、道具にしても定着しません。

Q. 最初に何を作ればいいですか?

条件は三つです。毎日か毎月かならず来る/今のやり方を大きく変えなくて済む/間違っても誰も困らない。

うちで言えば経費精算がこの条件にちょうど合っていました。派手ではありませんが、月末に必ず来て、全員が関わって、しかも間違いは経理が気づける仕事なんですね(経費精算の話はこちら)。

逆に、いきなり原価や数量の計算から入ると、合っているかを確かめるために全部やり直すことになります。

Q. 現場に新しいアプリを入れてもらえますか?

これはお勧めしません。便利かどうかより、今の流れに入るかどうかで決まります。

うちの日報や勤怠は、現場からはいつものメールやチャットで送ってもらう形にしました。新しい操作を覚えてもらう設計にしていたら、たぶん止まっていたと思います。

Q. 今使っているシステムとつなげられますか?

つながるものと、つながらないものがあります。

見分け方は、そのシステムがデータを外に出せるか。CSVやエクセルで落とせるなら、たいてい何とかなりました。画面で見ることしかできないものは、そこで止まります。

新しく道具を検討している段階なら、「うちのデータを外に出せますか」と先に聞いておくと早いです。やめるときに持ち出せるか、という意味でも同じ質問になりますから。

Q. 補助金は使えますか?

使える制度がある年もありますが、内容も要件も年度で変わります。 ここで一般論を書いても当てにならないので、商工会議所や自治体の窓口、あるいは顧問税理士さんにご確認ください。

ひとつだけ言えるのは、補助金に合わせて作るものを決めると、たいてい大きくなるということ。使うにしても、作るものを先に決めてから当てはめる順番の方が安全でしょう。

Q. 失敗したらどうなりますか?

小さく作っていれば、失敗も小さく済みます。うちにも、作ったのに使われなくなったものがありました。

**痛いのは、失敗そのものより「大きく作って失敗すること」**でした。関係者が多くて、決めることが多くて、動き出すまでに何か月もかかるもの。そういうものは、失敗したときに引き返せません。

Q. 途中でやめたくなったら、どうなりますか?

やめて構いません。ただ、やめる前に一度、使われている回数を見てください。 「使えていますか」と聞くと、たいてい「まあ」と返ってきます。回数を見ると、続いているのか止まっているのかがはっきりします(この話はこちら)。

止まっていた場合も、たいてい原因は道具の出来ではなく、入口の作り方でした。

まとめ

  • プログラミングより、何を作るかを決められるかの方が要る
  • 専任は置かなくてもいいが、社長が一度は触る
  • 外注との差は金額より直したいときの速さ
  • 壊れないものより、壊れたら分かるもの
  • 一本目は「毎回来る・流れを変えない・間違っても困らない」から選ぶ
  • 現場に新しい操作を頼む設計にしない
  • 大きく作らない。失敗しても引き返せる大きさで

このテーマの記事はまとめ:建設会社のAI導入、何から始めて何でつまずくかに読む順番で並べています。


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AUTHOR

﨑元 理安(ARCFEELGROUP株式会社 代表取締役)

土木・建築・設備の建設グループ(110名・3業種)の社長として、自社でのAIツール8本の内製を主導。 評論ではなく、当事者としての実装記録を書いています。

ARCFEEL × AI について

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