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読み物2026年8月6日

建設業のエクセルテンプレート、そのまま使えない理由——選ぶ基準は完成度より「直しやすさ」でした

工事台帳のテンプレートをダウンロードして、開いて、しばらく眺めて、閉じる。

「うちのやり方と、どこか違う」

探し方が悪いわけではありませんでした。ぴったり合うテンプレートのほうが、めずらしいんです。

私たちは建設会社で、この半年ほど、社内で使う道具を自分たちで作りながら回しています。以前、日報の記事で「エクセルで足りる会社と、足りなくなる会社」という分け方を書きましたが、あれはエクセルを卒業するかどうかの話でした。今回はその手前、テンプレートを探して「合わない」と感じたとき、どう考えるかの話です。

合わないのは、探し方のせいではありません

検索すると、工事台帳、作業日報、原価管理表、実行予算——建設業向けのエクセルテンプレートは、無料のものだけでも山ほど見つかります。作った方がそれぞれ実務を踏まえているので、出来の悪いものばかりというわけでもありません。

それでも「そのまま使えた」という話は、あまり聞きません。

理由は単純で、同じ建設業でも、会社ごとに動き方が違うからです。工事番号の振り方。締め日の数え方。経費をどの単位で分けるか。元請の仕事が多いか、サブコンの仕事が多いか。どれも会社ごとに少しずつ違っていて、テンプレートはそのどれか一つの形しか選べません。

ぴったり合う既製の型が最初からあるほうが、むしろ珍しい。そう考えると、「合わない」はテンプレートの欠陥でも探し方の失敗でもなくて、当たり前の初期状態なんですよね。

列の過不足より、「だれが・いつ埋めるか」が合わない

合わないというとき、見た目でまず気づくのは列の過不足です。うちには要らない列がある。うちで使っている項目がない。ここは足したり消したりすれば済みます。

直しにくいのはもう一段深いところで、その表を、だれが、いつ、埋めるのかが自社と合っていない場合です。

たとえば原価管理表のテンプレートには、「毎週、担当者が数字を転記する」前提で組まれたものがあります。事務の方が月に一度まとめて入れる会社でそれを使うと、空白の週が並んで、表が「遅れている」ように見えてしまう。表の形は同じでも、埋まり方の前提が違うわけです。

作業日報のテンプレートも同じです。現場で書く前提の様式と、帰社してから事務所で書く前提の様式では、項目の並びも粒度も変わってきます。現場で書くなら選ぶだけの項目が多いほうがよく、事務所で書くならまとめて振り返れる形のほうがいい。どちらが正しいという話ではなくて、自社がどちらの回し方なのか、が先にあるんです。

テンプレートが合わない本当の理由の図解。原価管理表は「毎週、担当者が数字を転記する」前提で組まれていることがあり、事務が月に一度まとめて入れる会社で使うと空白の週が並んで表が遅れているように見える。作業日報も現場で書く前提と帰社してから書く前提では中身が変わる。テンプレートが決めてくれるのは「どの情報を持つか」まで

テンプレートが決めてくれるのは「どの情報を持つか」まで。**だれが・いつ・どこから持ってくるかは、自社で決めるしかありません。**ここが決まらないままテンプレートだけ替えても、同じところで止まります。

それでも、テンプレートから始めるのは正解です

ここまで読むと「では自作するしかないのか」と聞こえるかもしれませんが、逆です。

ゼロから表を設計するのは、慣れていないとかなり骨が折れます。どの列が要るかを洗い出す作業そのものに、テンプレートは効くんです。開いてみて「この列はうちには要らない」と思えたなら、自社の動き方が一つ言葉になったということでもあります。

だから、そのまま使うことを目標にしない。たたき台として選んで、直して使う。最初からそのつもりで選ぶと、テンプレート選びはずいぶん気が楽になります。

選ぶ基準は、完成度より「直しやすさ」

そのつもりで見ると、選ぶ基準が変わってきます。

  • 数式が追えるか。 セルを開いたとき、何を計算しているのか分かるでしょうか
  • シートが分かれすぎていないか。 入力用・集計用・印刷用と分かれた凝った作りは、直すときに連鎖して壊れやすくなります
  • 保護やマクロだらけでないか。 触れない場所が多いものは、配布された形のままでしか使えません

迷ったら、試しに行を一行足してみてください。集計が追いかけてくるか、どこかの数式が壊れるか。直せるかどうかは、触ってみるのがいちばん早いです。ダウンロードしたその日に一度壊してみるくらいの気持ちで確かめておくと、使い始めてから困りません。

テンプレートを選ぶ基準の図解。数式が追えるか(セルを開いて何を計算しているか分かるか)、シートが分かれすぎていないか(入力用・集計用・印刷用と分かれた凝った作りは直すときに連鎖して壊れる)、保護やマクロだらけでないか(触れない場所が多いと配布された形のままでしか使えない)。迷ったら試しに行を一行足してみる

見栄えが良く、機能が多いテンプレートほど、この基準では不利になります。エクセルのいちばんの強みは、自分たちで直せることです。直せない作りのものを選ぶと、その強みを最初から手放すことになってしまいます。

会社を型に合わせるのではなく、型を会社に合わせる。エクセルは本来、それができる道具です。

「直した人しか触れない」には、先回りできます

直して使う、と決めたときに一つだけ気をつけたいのが、属人化です。直した本人しか構造が分からない表は、その方が異動や退職をした瞬間に、誰も触れない「開かずの表」になります。

大げさな仕組みは要りません。どこを・なぜ直したかを、シートの端にメモしておく。 数式を書き換えた日付と一言だけでも、次に触る人の負担がまったく違ってきます。

モルタル調の壁の部屋で、ベージュの作業着を着た二人が、それぞれノートパソコンを抱えて開き、一緒に画面を見ている写真

エクセルを直して使える会社は、その先にも向いています

私たちが社内の道具を自分たちで作っているのも、理由は同じところにあります。既製のシステムを検討したこともありますが、たとえば経費の締めの数え方ひとつ会社ごとに違っていて、そこが合わないと現場が混乱してしまう。経費精算の記事に書いたとおり、うちは「先に決めごとを決めて、道具をそれに合わせる」順番にしました。

やっていることは、テンプレートを直して使うのと同じです。会社の動き方に合わせて、仕組みの側を直す。 エクセルの列を足し引きするのも、AIで社内ツールを作るのも、規模が違うだけで同じ話でした。

だから、社内にエクセルを直して使ってきた方がいる会社は、AIの内製にも実は向いています。動き方を自分たちで設計する感覚が、もう社内にあるからです。

まとめ——「合わない」から始まるのが普通です

  • テンプレートが合わないのは当たり前。会社ごとに動き方が違うからです
  • 列の過不足より、「だれが・いつ埋めるか」を自社で決めるのが先です
  • たたき台として選び、直して使う。選ぶ基準は完成度より直しやすさです
  • どこを直したかのメモ一つで、属人化には先回りできます

エクセルで足りるうちは、エクセルで十分だと思います。足りなくなったときの分かれ目は日報の記事に書きましたので、あわせてどうぞ。

このテーマの記事はまとめ:建設業の経費精算・資金繰り・経営の数字に読む順番で並べています。


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AUTHOR

﨑元 理安(ARCFEELGROUP株式会社 代表取締役)

土木・建築・設備の建設グループ(110名・3業種)の社長として、自社でのAIツール8本の内製を主導。 評論ではなく、当事者としての実装記録を書いています。

ARCFEEL × AI について

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