安全書類を受け取る側(元請)の実務——揃え方は三通り、どれを選ぶかで段取りが変わります
前回、安全書類の話を出す側=サブコンの側から書きました。今回は逆で、受け取る側=元請の側からです。
私たちのグループは元請の立場もサブコンの立場も両方あるので、同じ書類を出す側でも受け取る側でも触っています。両方から見て思うのは、受け取る側の仕事は「集める」ことではないということでした。
集めるだけなら、締切を切って催促すればいい。難しいのは、集まったものが揃っているかどうかの方です。
揃え方は、いまのところ三通りあります
大手ゼネコンさんの現場ではウェブのサービスが広く使われていますが、受け取る側がそれを使っていないケースも多いと思います。どちらが良い悪いではなく、選べる形がいくつかある、という話です。
| やり方 | 向いている場面 | 気をつけるところ |
|---|---|---|
| ウェブのサービスを使う(グリーンサイト等) | 現場数が多い・協力会社がすでに登録済み | 全員が登録していないと、紙が並走します |
| 紙・PDFで受けて、自社で受領表を作る | 現場数が少ない・協力会社が固定 | 表を作る人が決まっていないと続きません |
| 両方が混ざる形 | 現実にはこれが一番多い | どちらで受けたかを一覧で分かるようにしておく |
実際には三つ目が多いはずです。全部を一度に揃えようとせず、混ざっている前提で、一覧だけは一つにしておく。これが現実的でした。
サービスを使う場合——一社でも未登録だと二重になります
こちらを選ぶ場合、元請がプロジェクトを立てて、協力会社を招待する形になります。招待された側が登録していれば、そこで完結します。
気をつけたいのは、登録していない会社が一社でも混じったときです。公式の案内でも、**一次の協力会社が未契約だと「紙での提出となり、電子と紙の二重管理になる」**と説明されています。加入が難しい二次以下には、代行登録という有償の受け皿も用意されています。
ですので、現場を立てる前に決めておきたいのが二つ。入場する会社を二次・三次まで洗い出すことと、そこに入れない会社をどう扱うかです。後者を決めずに進めると、当日になって一社だけ紙が出てきます。
サービスを使っていない場合——こういうやり方があります
紙やPDFで受けておられるなら、無理に切り替える必要はありません。表計算ソフト一枚でも、揃える形は作れます。
うちで見ていて分かりやすかったのは、一枚の受領表に横並びで置くやり方でした。
- 縦に会社名——二次、三次まで含めて、その現場に入る会社を全部
- 横に書類の種類——作業員名簿、再下請負通知書、持込機械の届など
- 交差するところに、受け取った日付を入れる——「済」ではなく日付にしておくと、古さが見えます
これだけで、誰の何が出ていないかが一目で分かります。空欄が催促する先で、古い日付が確認する先です。
そのうえで、資格や保険の期限だけは別に一覧を持つのがおすすめです。書類の受領と期限は別物なので、同じ表に混ぜると見づらくなります。
表計算で回す場合の弱点も、正直に書いておきます。誰かが更新しないと止まります。 続けられそうにないと感じたら、そのときが仕組みを検討するタイミングでしょう。
現場が増えると、抜ける場所は決まっています
一現場ならまだ目が届くでしょう。三つ、五つと増えると、抜け方に癖が出てきました。
一つ目、途中で入ってきた会社。 着工前に揃えたあと、工程の都合で急に増えた業種。ここが最も抜けます。
二つ目、人が入れ替わったとき。 会社としては提出済みでも、入場する人が変わればその人の分が要ります。
三つ目、長い現場の後半。 工期が長いほど、途中で期限が切れるものが出てくる。着工前に確認して安心してしまうと、そこで止まったままになりがちです。
三つとも共通しているのは、最初の一回を通過したあとに起きるということです。受け取る側の仕組みは、着工前の一回で終わらせない形にしておく必要がありました。
催促を減らすには、催促する前に決めておく
受け取る側で地味に時間を取られるのが、催促でした。
出てこない理由は、たいてい怠慢ではありませんでした。誰が出すのか決まっていない、いつまでか伝わっていない、出す先が二つある。この三つのどれかです。
ですので、催促の回数を減らしたければ、催促の仕方を工夫するより最初の連絡に三つ入れるほうが早い。
- 宛先——会社名ではなく、担当の方の名前まで
- 期日——「着工前」ではなく日付で
- 出す先——サービスなのか、こちらの担当者なのか。両方書かない
現場と本社の両方が催促している状態も、意外とよく見ます。どちらが追いかけるかを先に決めておくと、出す側も混乱しません。

現場が見るのか、本社が見るのか
これは会社によって分かれるところでした。
現場に任せれば、工程と一緒に見られる代わりに、忙しい時期に止まる。本社に集めると、止まりにくい代わりに、入場の予定を知らない人が確認することになります。
うまくいっている形を挙げるとすれば、**「受け取りと一次確認は本社、入場の可否は現場」**のように、見る目的で分けるやり方でしょうか。同じものを二人が同じ目で見ると、たいていどちらも見なくなります。
出す側を楽にすると、確認も楽になります
出す側の事情は前回の記事に書いたとおりで、取引先ごとに入れ直しが発生しています。こちらで軽くできるのは二点だけでした。
独自の様式を増やさないこと。 標準で足りるなら、そのまま使う。同じ内容を二度求めないこと。 一度出したものを別の紙で出させると、確実に雑になります。
雑になった書類を確認するのは、こちらです。入力を重くした分は、そのまま自分の確認時間に返ってくるのです。
機械が向くのは、突き合わせまででした
受け取る側でAIに向くのは、日付や氏名を拾って一覧にする、前回と見比べて変わったところを出すあたりまででした。
向かないのは、**「この現場にこの業種が入っていないのはおかしい」**という気づき方です。工程を知らないと出てきませんし、間違っていても分かりません。安全にかかわる確認を、気づけない形で任せるのは避けています。判定の考え方はサブコン側の記事に表で書きました。
現場からよく出る問い
Q. 紙で受けている会社が一社だけあります。
その一社のために、二重の管理が続く形になります。代行登録のような手段で拾えないか、まず確認されるのがよさそうです。それも難しければ、紙の分だけ別に期限の一覧を作るしかありません。
Q. 途中から入る会社の書類は、いつ確認していますか。
入場の前になります。ただ、工程が動いているときほど抜けますので、入場の予定と書類の受領を同じ場所で見る形にしておくと安心です。
Q. 費用の負担は、どちら側が重いのでしょうか。
サービスによりますが、立てる側は現場の数に応じた費用が乗る仕組みが一般的です。金額は改定されますので、契約の前に直接ご確認ください。
Q. 途中で抜ける会社が出たときは。
入場しなくなった時点で分かる形にしておかないと、名簿だけが残ります。工程の変更を聞いた人が、そのまま伝える経路を作っておくのが確実でした。
揃えるところまでが、受け取る側の仕事
安全書類は、集めることが目的の書類ではありません。誰がどんな体制で現場に入るのかを、把握できる状態にしておくためのものです。
そう考えると、受け取る側の仕事は書類を並べることではなく、同じ土俵に全員を乗せることなのでしょう。一社でも外れていれば、そこだけ見えない現場になってしまう。
現場を立てる前に、入る会社を一度書き出してみる。そこから始めるのが、いちばん確実な気がしています。
このテーマの記事はまとめ:建設業の日報・勤怠・現場の情報に読む順番で並べています。
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﨑元 理安(ARCFEELGROUP株式会社 代表取締役)
土木・建築・設備の建設グループ(110名・3業種)の社長として、自社でのAIツール8本の内製を主導。 評論ではなく、当事者としての実装記録を書いています。
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