2026年7月20日
建設会社のAI導入は「整ってから」でいいのか。1年使って分かった待つコスト
同業の集まりで、AIの話になることがあります。
「AIって、実際どうなの」
誰かがそう言って、
「うちはまだいいかな。もう少し様子を見てから」
そんな話で一巡して、別の話題に移る。
よくある場面です。
その場では、たしかにそうだよな、と思います。
まだ変わりそうだし、今入れてもすぐ古くなるかもしれない。
ただ、帰りの車で、少しだけ引っかかる。
待つ方が正しい気もする。
でも、待っている間に何かを失っている気もする。
私たちも、この1年、AIを使って、作って、止まって、直してきました。
そこで分かったのは、待つことのコストは機能の差ではなかった、ということです。
差がつくのは、使いながら直した経験の方でした。
「整ってから」は、建設業では自然な判断です
新しい重機や工法を入れる時は、慎重になります。
先に入れた会社の話を聞く。
不具合が落ち着いたかを見る。
現場で本当に使えるのかを確かめる。
実績が出てから入れる方が、安全なことも多いです。
だから、AIも同じように考えたくなります。
もう少し性能が上がってから。
もう少し周りが使い始めてから。
一見すると、かなり合理的です。
私たちも建設業を20年以上やってきたので、この感覚はよく分かります。
ただ、AIは少しだけ違いました。
重機は、入れる時点で用途が比較的はっきりしています。
AIは、入れた日から自社での使い方を探し始めます。
何を頼むか。
どこまで任せるか。
出てきた答えを、誰が見るか。
道具が整うのを待っても、この部分までは整ってくれませんでした。
本当に開くのは、機能の差ではありませんでした
同じAIを同じ時期に使い始めても、同じように使えるわけではありません。
すでに使っている会社には、少しずつ感覚が溜まっています。
この仕事なら頼める。
この言い方だとズレる。
ここまでは速いけれど、最後は人が見た方がいい。
そういう判断です。
これは、説明書を読んで覚える感じではありません。
一度頼んでみる。
思った答えが返らない。
頼み方を変える。
人が見る場所を決める。
その繰り返しで、やっと分かってきます。
私たちが感じたのは、AIを作ることより、この直し方を会社の中に残す方が難しいということでした。
その話は、建設会社のAI内製は、作るより直す方が難しい話にも書いています。
AIが整えば、機能の差は縮まります。
でも、直した回数まで一緒に増えるわけではありません。
そこが、待っている時には見えにくいところでした。
AIに頼むと、「いつものやり方」が見えてきます
AIを使い始めると、別のことにも気づきます。
人間同士なら通じていた省略が、AIには通じません。
たとえば、事務所で、
「いつもの形でまとめておいて」
と言えば通じることがあります。
でも、AIには、その「いつもの形」が分かりません。
何を先に書くのか。
どの数字を残すのか。
最後に誰が確認するのか。
一つずつ言葉にする必要があります。
少し面倒です。
ただ、その面倒を通ると、自社の仕事のやり方が見えてきます。
見積書のどこを見て判断しているのか。
現場日報のどの一文に引っかかるのか。
会議のメモから、誰が何を拾っているのか。
普段は頭の中で済ませていたことが、外に出てきます。
AIを使う経験とは、操作に慣れることだけではありませんでした。
自社の仕事を、AIにも分かる形まで言葉にする経験でもありました。
待っている間、この書き出しは進みません。
AIが賢くなっても、うちの「いつもの形」は勝手には決まりません。
担当者だけに任せると、便利な道具で止まりやすいです
AIの細かい技術まで、社長が覚える必要はないと思います。
専門用語も、新しい情報も、全部追わなくていい。
ただ、ある程度は触っていた方が、会社の動きは早くなりました。
一度でも自分で頼んでみると、
「これは任せられそうだな」
「これは最後に人が見た方がいいな」
という話が、かなり具体的になります。
一部の担当者だけが使っていると、個人の便利で終わりやすいです。
文章を整える。
会議のメモをまとめる。
調べものに使う。
それぞれ助かってはいても、会社全体の仕事の流れまでは変わりにくい。
どこから入れるか。
誰の仕事を先に軽くするか。
その後ろで、誰の確認が減るのか。
ここを見るのは、やはり社長の仕事でした。
建設会社の経営で何から触るかは、建設会社の経営にChatGPTが効く5つの場面にまとめています。
社長がAIに詳しい会社が早い、というよりも、
社長が一度でも触っていて、できることと任せきれないところを知っている会社は、次の判断が早い。
私たちの実感は、こちらです。
8本作っても、最初から上手だったわけではありません
私たちは、土木・建築・設備の3業種で、約110名の会社を運営しています。
この1年で、AIツールを8本、内製して運用してきました。
数字だけを見ると、順調に進んだように見えるかもしれません。
実際は、作って終わりではありませんでした。
使い始めて、止まる。
直して、また使う。
別の場所でズレて、また直す。
その繰り返しでした。
最初の頃は、AIの答えが正しいかどうかばかり見ていました。
使い続けるうちに、見る場所が変わりました。
誰が使うのか。
どの場面で使うのか。
どこから人が確認するのか。
間違えた時に、仕事が止まらない形になっているか。
AIそのものより、仕事のつなぎ目を見るようになりました。
この感覚は、1年かけて、ようやく少しずつ溜まったものです。
AIの性能が上がっても、私たちの使い方まで自動で上手くなるわけではありませんでした。
そこは、新しい重機を待つ感覚とは、少し違いました。
焦る必要はありません。ただ、小さく触った時間は残ります
今すぐ大きく始める必要はありません。
全社で一斉に使う必要もないです。
焦る必要はありません。
毎週、誰かが同じ内容を書き直している。
会議のメモを、あとから別の形にまとめ直している。
現場から来た情報を、事務所でまた入力している。
そんな仕事を一つだけ選び、AIにどこまで頼めるかを見てみる。
うまくいかなければ、その理由を一つ残す。
それだけでも、会社の経験になります。
待つこと自体は、悪い判断ではありません。
ただ、待っている間にAIは良くなっても、こちらの経験は増えません。
そのことを知った上で待つのと、何となく待つのとでは、少し違います。
同業の集まりの帰り道で、引っかかるものがあるなら、
始めるかどうかまで決めなくてもいいと思います。
まず一度、自分の会社の仕事を一つ、AIの前に置いてみる。
私たちも、そこから少しずつでした。
よくあるご質問
Q. 社長自身がAIの操作を覚える必要はありますか?
A. 細かい操作まで覚える必要はありません。
ただ、一度は自分で触って、どこまで頼めて、どこでズレるのかを見ておくと、社内での判断が具体的になります。
Q. 最初は、どの仕事から試すのがよいですか?
A. 誰かが同じ内容を書き直している仕事から見ると、始めやすいです。
会議のメモをまとめる、文章の形をそろえる、情報を別の書類に移す、といった場面です。
いきなり会社全体を変えず、一つの仕事でズレ方を見る方が、経験が残ります。
Q. もう少しAIが整うまで待つのは、間違いですか?
A. 間違いではありません。
会社の状況によっては、今は別のことを優先する判断もあります。
ただ、待っている間は、自社で使って直した経験は積み上がりません。
そのことを知った上で待つ、という判断ならいいと思います。
AIをどこから触るか整理したい時は、無料相談で今の業務を一緒に見ています。
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ARCFEELGROUP株式会社
ARCFEELGROUP株式会社。土木・建築・設備の建設グループ(110名・3業種)で、 建設業のIT/DXとAI活用ツールの内製を担っています。評論ではなく、当事者としての実装記録を書いています。
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