印刷するとA4に収まらない——画面のきれいさと、紙のきれいさは別でした
「使ってみて初めて分かった不具合」の例として、これまで三つ挙げてきました。
夜勤の集計が合わない。印刷するとA4に収まらない。混み合う時間帯に重くなる。
一つ目は勤怠の点検で、三つ目はアプリが遅いという話で書きました。
残っているのが、印刷です。
画面で完結するつもりで作っていました
作る側は、画面を見て作ります。
列を足しても、画面は横に伸びるだけです。項目が増えても、下にスクロールできます。だから、画面の中では何も破綻しません。
ところが、使う側は紙で見ます。
勤務表を印刷したら、二枚目に一列だけはみ出している。真ん中で切れている。文字が小さくて読めない。こういうことが起きました。
画面のきれいさと、紙のきれいさは別だったんですよね。
なぜ紙が残るのか
「今は何でも画面で見る時代です」と言いたくなるところですが、実際にはそうなっていません。
- 提出先が紙を求める(押印が要るもの、決まった様式で出すもの)
- 現場に貼る、回す
- 手元で並べて見比べる
三つ目は、意外と大きいです。二か月分を並べて見るとき、紙の方が速い場面があります。画面を二つ開いて行き来するより、机に並べた方が分かる。これは慣れの問題ではなく、紙の方が向いている作業だと思います。
だから「まず紙をなくしましょう」から入ると、たいてい止まります。
出せないものを減らすことはできません。出せる状態にしてから、必要なものを減らしていく方が順番として素直でした。
A4縦一枚に収めることが、要件になりました
社内の勤怠の仕組みでは、勤務表がA4縦一枚にぴったり収まるように印刷を作り直しました。そのまま提出できる形です。
やってみて分かったのは、これは表示を調整する作業ではなかったということです。
一枚に収めるには、載せる項目を減らさなければなりません。
全部載せると、文字が小さくなって読めなくなります。読めない紙は、印刷できていないのと同じです。ですので、何を載せて何を落とすかを決めることになりました。
画面には全部あっていい。でも紙は、一番よく見られる形に合わせて絞る。この二つが違っていていいと分かってから、作りやすくなりました。
印刷は、体裁の話ではなく何を捨てるかを決める作業でした。
金額の桁も、同じ性質でした
もう一つ、地味ですが効いたものがあります。
金額の入力欄を、三桁ごとのカンマ区切りで表示するようにしました。3500000ではなく、3,500,000と出ます。
建設業は金額の桁が大きいので、ゼロが一つ違うと大事になります。カンマが入っていれば、目で見た瞬間に桁が分かります。入っていなければ、指で数えることになります。
これも、機能が増えたわけではありません。ただ、読み間違いを減らすのは、計算を速くするのと同じくらい実務では効きます。
見やすさは飾りではなかった、という話です。

道具を選ぶときに、印刷してみてください
既製のツールを検討されるとき、デモでは印刷まで見ないことが多いと思います。画面はどれもきれいにできています。
見ておくとよいのは、この三つです。
- A4に収まるか。 収まらない場合、どこまで自分で調整できるか
- 必要な列が入っているか。 収めるために、必要な項目が落ちていないか
- そのまま出せるか。 エクセルに出してから体裁を整える手間が残らないか
三つ目が残ると、毎月その作業が発生します。月に三十分でも、一年で六時間です。導入前に一度、実際に紙を出してみるだけで分かります。
今日できる確認
いま社内で使っている画面を一つ選んで、印刷してみてください。
一つ目は、はみ出さずに収まるかです。
二つ目は、収まった紙が読めるかです。収まっていても、小さすぎて読めなければ使えません。
三つ目は、その紙をそのまま出せるかです。手で書き足している欄があれば、そこが直す場所です。
よくいただく質問
Q. ペーパーレスに逆行していませんか。
A. 紙を減らすことには賛成です。ただ、「出せない」と「出さない」は違うと思っています。出せる状態にしておいて、要らなくなった分から減らしていく。この順番の方が、現場が納得しやすいです。
Q. PDFで渡せば済みませんか。
A. 渡した相手が印刷します。そのときに崩れれば、同じことが起きます。誰が出しても同じ形で出るかどうかが、実際の分かれ目でした。
Q. エクセルに出せれば十分ではないですか。
A. 出せるのは大事です。ただ、出した後に毎回体裁を整えているなら、その時間は減っていません。最初から出したい形で出るようにしておくと、その分がなくなります。
画面の中だけでは、完成しません
作った直後は、画面がきれいだと完成したように見えます。
でも、その仕組みが実際に使われる場面は、画面の外にもあります。紙で出す。人に渡す。提出する。
社内で8本ほど作ってきて、最後に手間がかかったのは、だいたいこの外側でした。
一度、印刷してみる。それだけで、残っている作業が見えてきます。
このテーマの記事はまとめ:建設業の経費精算・資金繰り・経営の数字に読む順番で並べています。
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﨑元 理安(ARCFEELGROUP株式会社 代表取締役)
土木・建築・設備の建設グループ(110名・3業種)の社長として、自社でのAIツール8本の内製を主導。 評論ではなく、当事者としての実装記録を書いています。
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