料金を載せたサイトと、載せなかったサイト——同じ会社で判断が分かれた理由
駐車場の舗装のサイトには、㎡あたりの単価を載せています。
クレーンを手配するサイトには、料金を一切載せていません。
同じ会社が作った、同じ時期のサイトです。方針がぶれたわけでも、片方だけ正直にしたわけでもありません。先に答えを出せるかどうかが、違っただけでした。
私たちは建設の会社で、集客のサイトもこの半年ほど自分たちで作って回しています。見積書の「一式」という書き方について前に書きましたが、あれは書けるのに書いていない話でした。今回は、書くと嘘になる場合との線引きの話です。

舗装は、面積が分かれば幅で答えられました
駐車場の舗装は、広さが決まれば、おおよその金額が出せます。
砂利から新しく舗装するなら㎡あたり4,500〜6,500円、傷んだものを打ち替えるなら6,500円/㎡から。乗用車5台分ならこのくらい、10台分ならこのくらい、という形まで書けます。
もちろん、実際には下の状態や搬入経路で変わります。でも変わり方が幅の中に収まるので、幅で出しておけば大外れはしない。
ここまで書けるなら、載せない理由はありませんでした。調べている方がいちばん知りたいのはそこですし、伏せておくと、金額を聞くためだけに電話をかけていただくことになります。
書きながら一つ気をつけたのは、㎡では伝わらないということでした。自分の駐車場が何㎡かを即答できる方は多くありません。なので、乗用車5台分・10台分・20台分という形でも並べています。単価は正確ですが、台数の方が読めます。この二つは両方あった方がよさそうです。

クレーンは、幅で書くと外れる仕事でした
一方、クレーンの手配は事情が違いました。
同じ25tのクレーンでも、費用はトン数だけでは決まりません。現場までの回送距離、作業にかかる時間、搬入経路や養生の要否。この四つで変わります。
幅で書こうとすると、幅がとても広くなります。 そして広い幅を出すと、読む方は必ず安い方を覚える。後で見積もりを出したときに「話が違う」となる。これはお互いにとって良くありません。
なので、金額の代わりに決まり方を載せました。「トン数・回送距離・作業時間・現場条件の四つで変わります」と書いて、それぞれが何を指すのかを説明しています。
あわせて、費用を抑える考え方も別の記事にしました。回送の距離が効くので現場に近いところから手配する、といった話です。金額そのものは書けなくても、どうすれば安くなるかは書けます。ここは読む側にとって、単価表と同じくらい実用的なところではないでしょうか。
決めたのは「載せる/載せない」ではありませんでした
作りながら気づいたのは、二択で考えていたこと自体がずれていた、ということでした。
料金のページで本当に決めるのは、載せるかどうかではなく、何が分かれば答えられるかを書けるかです。
- 舗装は「広さが分かれば、この幅で出せます」
- クレーンは「吊る物・場所・日にちが分かれば、その日のうちに出せます」
どちらも、読む方から見れば次に何をすればいいかが分かるという点では同じ。金額が書いてあるかどうかより、ここの方が効いている気がしています。
「詳しくはお問い合わせください」だけだと、土俵に上がれません
載せない判断をするときに、気をつけたことがあります。
金額を書かない代わりに何も書かないと、比較の土俵にすら上がれない。調べている方は、たいてい何社かを並べて見ています。片方に幅なり考え方なりが書いてあって、もう片方に「お問い合わせください」しか無ければ、そちらは開かれません。
伏せる理由が正当でも、伏せた分だけ何かを渡す必要がある。渡すものは、だいたい次の三つのどれかになります。
- 金額が何で動くのか(決まり方)
- 安くする方法があるなら、その考え方
- 何を用意すれば、いつまでに答えが返ってくるか
このどれも無いまま「お問い合わせください」だけを置くのは、こちらの都合しか書いていない状態です。他社が載せていないから載せない、というのも理由になりません。読む側は、他社と並べたうえで開く先を決めています。

建設の見積書でも、同じことが言えると思います
お客様に出す資料でも、同じ形が使えます。
現地を見ないと金額が出せない工事は、いくらでもあります。そのときに「現地確認のうえご提案します」で止めるか、**「間口の寸法と、既存の状態が分かる写真が2枚あれば、3営業日で概算をお出しします」**と書くか。
後者は金額を一円も書いていませんが、受け取る側にとっては前進です。何を用意すればいいか、いつ返ってくるかが分かるので。
出せないのではなく、条件を書いていないだけ、ということが実は多いのではないでしょうか。
自社で決めたのは、この三つでした
出せる数字は、幅で出す。 正確さより、桁が分かることの方が読む側には価値がある。
出せないものは、決まり方を出す。 何で金額が動くのかが分かれば、読む側も自分の現場に当てはめて考えられます。
どちらの場合も、何が分かれば答えられるかを書く。 これが一番効くと思っていますが、いちばん書き忘れます。
三つ目が抜けると、読んだ方は「じゃあ何を送ればいいのか」で止まる。そこで止まった方は、たいてい戻ってきません。
なお、公開してからまだ日が浅く、効果を数字で言えるほどは溜まっていません。ここは正直に申し上げておきます。

いただいた質問から
Q. 料金を載せると、値段だけで比較されませんか?
比較はされます。ただ、載せていなくても比較はされていて、その場合は候補から静かに外れているだけです。それなら、幅と一緒に「何でこの幅が動くのか」を書いておく方が、話が早いと感じています。
Q. 安い会社に負けてしまいませんか?
金額だけを見る方には負けます。そこは仕方がないと考えています。ただ、金額の内訳や、何が含まれていないかを書いておくと、見比べる目を持った方には届きます。見積書の見方を書いた記事を用意しているのも同じ理由です。
Q. 一度載せた金額を、上げにくくなりませんか?
なります。なので、単価は決裁のある数字だけを載せて、根拠が言えないものは載せないようにしています。値上げが必要になったときは直せばよく、それより言えない数字を勢いで載せる方が後で困ります。
載せる勇気より、条件を書く手間
料金を公開するかどうかは、勇気の話として語られがちです。
やってみると、勇気より手間の話でした。何が分かれば答えられるのかを自分たちの側で決めきる。そこさえ済めば、載せるか載せないかは自然に決まる。
うちの場合は、それが業種によって別々の答えになった、というだけのことでした。
このテーマの記事はまとめ:建設会社のAI導入、何から始めて何でつまずくかに読む順番で並べています。
AUTHOR
﨑元 理安(ARCFEELGROUP株式会社 代表取締役)
土木・建築・設備の建設グループ(110名・3業種)の社長として、自社でのAIツール8本の内製を主導。 評論ではなく、当事者としての実装記録を書いています。
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