「実装します」をやめました——見積書の「一式」と、同じ問題だと思います
サイトから「実装します」という言葉を消しました。
嘘ではありません。実際にやっている作業です。ただ、読む人によって受け取り方が違うことに気づきました。
同じ言葉が、二通りに読まれていました
「AIツールを実装します」と書いたとき、こちらの意図は「御社の業務に合わせて、使える形に整える」でした。
ところが、この言葉は「全部こちらで作ります」とも読めます。実際、そう受け取られている場面がありました。
そうすると、話が始まってから食い違います。丸ごとやってくれると思っていた側と、一緒に進めるつもりだった側。どちらも悪気はなく、同じ言葉を読んで違うものを想像していただけです。
だから、「AIツールを御社の業務に合わせて整える」という言い方に変えました。長くなりましたが、こちらの方が食い違いません。
ついでに、「90日」と「1年」を並べて書いていた箇所も直しました。足すと15か月に読める書き方になっていたためです。読み返して、自分で驚きました。
建設業には、もっと有名な言葉があります
「一式」です。
見積書に「電気工事 一式」とだけ書いてある。金額は入っている。何が含まれているかは、書いた人の頭の中にある。
**書いた側は分かっています。読む側は分かりません。**そして、揉めるのは工事が終わった後です。「これも入っていると思っていた」「いや、入っていない」。
似た言葉は他にもあります。
- 「対応します」——直すのか、見るだけなのか
- 「確認しておきます」——いつまでに、誰に返すのか
- 「調整します」——誰と、何を
- 「別途」——いくらなのか、誰が負担するのか
どれも、その場では話が通ります。困るのは、後から思い出すときです。
曖昧な言葉は、その場を楽にします
正直に書くと、曖昧な言葉は便利です。
はっきり書くと、その場で断らなければならない場面が出てきます。「そこまでは含まれません」と言うのは、気まずい。だから「対応します」と言っておく。その場は丸く収まります。
でも、収まっているのは今だけで、話は後ろにずれているだけです。後ろにずれた分、思い出すのが大変になり、証拠も残っていません。
うちがサイトの言葉を直したときも、同じ感覚がありました。**具体的に書くほど、できないことがはっきりする。**書きながら、少し怖かったです。
ただ、書いてしまうと楽になりました。問い合わせの段階で「そこは含まれないんですね」と確認していただけるので、始まってからの食い違いが減ります。
直すときの手がかり
自社の見積書やサイトを見直すなら、次の言葉を探してみてください。
**一つ目、「一式」。**中身を書けるものは書く。書けないなら、なぜ書けないのかを考えると、たいてい何か決まっていないことが見つかります。
二つ目、期間と回数。「随時」「適宜」「必要に応じて」。これらは、こちらの都合でどうにでもなる言葉です。月1回なら月1回と書く。
三つ目、主語。「確認します」の主語が誰か。自社なのか、相手なのか、第三者なのか。抜けていると、両方が「相手がやる」と思っている状態が生まれます。
**四つ目、数字が並んでいる箇所。**うちの「90日」と「1年」のように、足し算されて読まれる並びになっていないか。ここは自分では気づきにくいので、書いていない人に読んでもらうのが早いです。
全部を具体にする必要はありません
念のため書いておくと、何もかも細かく書けばよいという話ではありません。
現場の条件で変わるものは、変わると書く方が誠実です。「現地を確認したうえでご提案します」は曖昧な言葉ではなく、正確な言葉です。
分けるとすれば、こうなります。
- 決まっているのに書いていないもの → 書く
- 決まりようがないもの → 決まらない理由と、いつ決まるかを書く
前者を放置すると、後で揉めます。後者を無理に書くと、守れない約束になります。

よくある質問
Q. 見積書を細かくすると、比較されて不利になりませんか。
A. 逆のことも起きます。中身が書いてあると、他社の「一式」と比べたときに、何が含まれているかを説明できるのはこちらだけになります。安く見えるかどうかより、後から追加が出ないかどうかを気にされる発注者は多いです。
Q. 昔からの書き方を変えると、社内が混乱しませんか。
A. 一度に全部変えなくてよいと思います。うちも、気づいた箇所から順に直しました。よく使う書式を一つ選んで、そこだけ直すところから始めるのが現実的です。
Q. AIに書かせると、こういう曖昧さは減りますか。
A. 減りません。AIは、渡した情報の範囲でしか書けないからです。含まれる作業が決まっていなければ、それらしい言葉で埋めてきます。むしろ、AIに書かせようとすると「何が決まっていないか」が見えてきます。そこが本当の作業です。
言葉を直すのは、いつでもできます
システムを入れる、業務を変える。こういう話は、時間もお金もかかります。
一方で、使っている言葉を直すのは、今日からできます。見積書のひな形を開いて、「一式」を一つ書き換える。それだけでも、後で戻ってくる問い合わせが変わります。
うちがサイトの文言を直したのも、一日で終わる作業でした。効果は地味ですが、話が始まる前に食い違いを潰せるという意味では、後から直すより何十倍も楽です。
このテーマの記事はまとめ:建設会社のAI導入、何から始めて何でつまずくかに読む順番で並べています。
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AUTHOR
﨑元 理安(ARCFEELGROUP株式会社 代表取締役)
土木・建築・設備の建設グループ(110名・3業種)の社長として、自社でのAIツール8本の内製を主導。 評論ではなく、当事者としての実装記録を書いています。
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