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読み物2026年7月29日

「実装します」をやめました——見積書の「一式」と、同じ問題だと思います

サイトから「実装します」という言葉を消しました。

嘘ではありません。実際にやっている作業です。ただ、読む人によって受け取り方が違うことに気づきました。

同じ言葉が、二通りに読まれていました

「AIツールを実装します」と書いたとき、こちらの意図は「貴社の業務に合わせて、使える形に整える」でした。

ところが、この言葉は「全部こちらで作ります」とも読めます。実際、そう受け取られている場面がありました。

そうすると、話が始まってから食い違います。丸ごとやってくれると思っていた側と、一緒に進めるつもりだった側。どちらも悪気はなく、同じ言葉を読んで違うものを想像していただけです。

だから、「AIツールを貴社の業務に合わせて整える」という言い方に変えました。長くなりましたが、こちらの方が食い違いません。

ついでに、「90日」と「1年」を並べて書いていた箇所も直しました。足すと15か月に読める書き方になっていたためです。読み返して、自分で驚きました。

同じ言葉が二通りに読まれていた、の図解。「AIツールを実装します」は、こちらの意図では「貴社の業務に合わせて、使える形に整える」だが、「全部こちらで作ります」とも読める。どちらも悪気はなく同じ言葉から違うものを想像していただけなので、「AIツールを貴社の業務に合わせて整える」という言い方に変えた

建設業には、もっと有名な言葉があります

「一式」です。

見積書に「電気工事 一式」とだけ書いてある。金額は入っている。何が含まれているかは、書いた人の頭の中にある。

書いた側は分かっています。読む側は分かりません。そして、揉めるのは工事が終わった後です。「これも入っていると思っていた」「いや、入っていない」。

似た言葉は他にもあります。

  • 「対応します」——直すのか、見るだけなのか
  • 「確認しておきます」——いつまでに、誰に返すのか
  • 「調整します」——誰と、何を
  • 「別途」——いくらなのか、誰が負担するのか

その場では通って後から困る言葉を並べた図解。「一式」は何が含まれているのかが書いた人の頭の中にある。「対応します」は直すのか見るだけなのか。「確認しておきます」はいつまでに誰に返すのか。「調整します」は誰と何を。「別途」はいくらなのか誰が負担するのか

どれも、その場では話が通ります。困るのは、後から思い出すときです。

曖昧な言葉は、その場を楽にします

正直に書くと、曖昧な言葉は便利です。

はっきり書くと、その場で断らなければならない場面が出てきます。「そこまでは含まれません」と言うのは、気まずい。だから「対応します」と言っておく。その場は丸く収まります。

でも、収まっているのは今だけで、話は後ろにずれているだけです。後ろにずれた分、思い出すのが大変になり、証拠も残っていません。

うちがサイトの言葉を直したときも、同じ感覚がありました。具体的に書くほど、できないことがはっきりする。書きながら、少し怖かったです。

ただ、書いてしまうと楽になりました。問い合わせの段階で「そこは含まれないんですね」と確認していただけるので、始まってからの食い違いが減ります。

直すときの手がかり

自社の見積書やサイトを見直すなら、次の言葉を探してみてください。

一つ目、「一式」。中身を書けるものは書く。書けないなら、なぜ書けないのかを考えると、たいてい何か決まっていないことが見つかります。

二つ目、期間と回数。「随時」「適宜」「必要に応じて」。これらは、こちらの都合でどうにでもなる言葉です。月1回なら月1回と書く。

三つ目、主語。「確認します」の主語が誰か。自社なのか、相手なのか、第三者なのか。抜けていると、両方が「相手がやる」と思っている状態が生まれます。

四つ目、数字が並んでいる箇所。うちの「90日」と「1年」のように、足し算されて読まれる並びになっていないか。ここは自分では気づきにくいので、書いていない人に読んでもらうのが早いです。

全部を具体にする必要はありません

念のため書いておくと、何もかも細かく書けばよいという話ではありません。

現場の条件で変わるものは、変わると書く方が誠実です。「現地を確認したうえでご提案します」は曖昧な言葉ではなく、正確な言葉です。

分けるとすれば、こうなります。

  • 決まっているのに書いていないもの → 書く
  • 決まりようがないもの → 決まらない理由と、いつ決まるかを書く

具体に書くものと書かないものを分けた図解。決まっているのに書いていないものは書く(放置すると後で揉める)。決まりようがないものは、決まらない理由といつ決まるかを書く(無理に書くと守れない約束になる)。「現地を確認したうえでご提案します」は曖昧ではなく、正確な言葉

前者を放置すると、後で揉めます。後者を無理に書くと、守れない約束になります。

事務所の会議テーブルで、作業着姿の男女四人が住宅の模型と図面を囲んで話している写真

よくある質問

Q. 見積書を細かくすると、比較されて不利になりませんか。

A. 逆のことも起きます。中身が書いてあると、他社の「一式」と比べたときに、何が含まれているかを説明できるのはこちらだけになります。安く見えるかどうかより、後から追加が出ないかどうかを気にされる発注者は多いです。

Q. 昔からの書き方を変えると、社内が混乱しませんか。

A. 一度に全部変えなくてよいと思います。うちも、気づいた箇所から順に直しました。よく使う書式を一つ選んで、そこだけ直すところから始めるのが現実的です。

Q. AIに書かせると、こういう曖昧さは減りますか。

A. 減りません。AIは、渡した情報の範囲でしか書けないからです。含まれる作業が決まっていなければ、それらしい言葉で埋めてきます。むしろ、AIに書かせようとすると「何が決まっていないか」が見えてきます。そこが本当の作業です。

言葉を直すのは、いつでもできます

システムを入れる、業務を変える。こういう話は、時間もお金もかかります。

一方で、使っている言葉を直すのは、今日からできます。見積書のひな形を開いて、「一式」を一つ書き換える。それだけでも、後で戻ってくる問い合わせが変わります。

うちがサイトの文言を直したのも、一日で終わる作業でした。効果は地味ですが、話が始まる前に食い違いを潰せるという意味では、後から直すより何十倍も楽です。

このテーマの記事はまとめ:建設会社のAI導入、何から始めて何でつまずくかに読む順番で並べています。


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AUTHOR

ケンセツベース(ARCFEELGROUP株式会社)

土木・建築・設備の建設グループ(110名・3業種)が、自社でのAIツール8本の内製を主導しました。 評論ではなく、当事者としての実装記録を書いています。

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